予想を上回る「非農業就業者数」 利上げは確実か
米労働省が12月8日に発表した11月の米雇用統計では、失業率が4.1%だった。これは、前月と変わらないが、17年ぶりの低水準でもある。また、非農業部門の就業者数は前月から22万8千人増と、市場予想だった20万人増を上回り、労働市場の堅調さがうかがえる結果となった。1時間当たりの平均賃金は10月から5セント(0.2%)増えた。前年同月比では2.5%増と伸び率が拡大しており、賃金も10月の一時的な減少から持ち直したと言えるだろう。
今夏、米国を襲った一連のハリケーンの影響で、一時的に職を失う人が増えるなどしたため、9月から10月にかけての経済統計には歪みがあり、景気を読む材料としては解釈が難しかったが、11月雇用統計では、その歪みもなくなるものとして注目されていた。
また、雇用統計に加えて、第3四半期米国国内総生産(GDP)は年率で3.3%増となった。GDPの伸びとしては3年ぶりの大幅な増加を示した。ハリケーン被災地域での復興需要もあり、成長率には一段の弾みがついた形である。いずれの経済指標も、米国経済は引き続き堅調な状態であることを示したといえる。
12月12~13日に開催される、米連邦準備理事会(FRB)の連邦公開市場委員会(FOMC)では、利上げは間違いなくなったものと思われる。もっとも、市場は今月の利上げをほとんど織り込んだ状態である。
今後の議論が予測される「中立的な金融政策」のスタンス
一方で、2018年の金融政策は、なかなか難しい判断を迫られるのではないかと筆者は推測している。利上げは(今回、12月に利上げを実施したとして)既に5回を数える。前回のFOMCでの判断が踏襲されれば、FRBは2018年も、さらに3回の利上げを実施する見通しを示すことになる。
金利の絶対水準は、0.25%ずつの利上げであっても、2%を超えてくるのである。FRBは、緩和的な金融政策のスタンスを中立に戻すという説明に終始してきたが、何処まで金利を上げることが中立的な政策であるのか、政策金利を上げすぎて景気にブレーキがかかることを懸念する声も出るに違いない。
また、好景気を示す好調な経済指標は、トランプ政権が進める税制改革への批判に繋がる可能性がある。税制改革法案の目玉は、法人税を35%から20%へ引き下げることである。トランプ政権と共和党は、法人税減税は景気をさらに押し上げ、企業がより多くの雇用を生み出すことになると主張している。
労働市場は、求人募集件数でも過去最高水準に近い状態で、米FRBをして「完全雇用状態に近い」という状態にある。平均賃金の伸びは、2018年には3%を超えてくるとの見方も一部で出てきており、景気の状態が良く、労働市場の引き締まりが継続する中、ここでトランプ政権が財政政策に打って出る、すなわちアクセルを吹かすことへの警戒感も強まるだろう。
減税案は、上下両院で異なる法案が議決された。今後、両院協議会を経て、再議決に諮り、大統領が署名することにより成立するが、政策の中身が、今後の相場を占う部分も大きいだけに、引き続き注意深く見守りたい。