金融政策は継続の見通し、市場の安心感に
ホワイトハウスは、11月2日、トランプ大統領がFRB議長にパウエルFRB理事を指名することを明らかにした。イエレン現議長の任期は2018年2月までである。それまでに、FRB議長人事は上院で承認される必要がある。パウエル氏は共和党員だが、特定のイデオロギーに偏らず、実務者というイメージが強い。上院でも超党派の支持が期待でき、承認にも波乱はないと見られる。
パウエル氏は、金融市場と金融規制に通じており、金融規制緩和などの議論にも、知見を発揮できるだろう。ドッド・フランク法(金融規制改革法)の一部緩和を提唱し、銀行の自己勘定取引を制限するボルカー・ルールの修正方法について発言したこともあるなど、金融規制の緩和を目指すトランプ政権と方向感に隔たりはない。
パウエル氏がイエレン議長の後任に就くことで、段階的な利上げは継続されるというのが市場の見通しで、イエレン議長の政策は引き継がれるとみられており、やはり当たり障りのない人選という評価が大勢を占めよう。実際に、パウエル氏は、FRB理事としてこれまでイエレン議長と歩調を合わせて緩やかな利上げを支持してきており、公開市場委員会(FOMC)で反対票を投じたこともなかった。
政策の継続性が見通せることは、市場の安心感に繋がるだろう。パウエル氏は、金融政策について10月12日の講演で、「米経済がほぼ予想通り推移する限り、金融政策の正常化は今後もこれまでのように漸進的に進めるべきだ」と述べており、イエレン議長の発言との差は見られない。
政策金利引き上げ、BS縮小…政策の舵取り今後も難しく
現実には、2018年を見通すと金融政策の舵取りは難しいと言わざるを得ない。雇用環境は、完全雇用状態でさらに引き締まる可能性がある上、インフレ率は現在は落ち着いた動きをしているが、高まる可能性には注意が必要である。FRBは、2015年12月から政策金利を4回に亘って段階的に引き上げてきたほか、ここへきて4兆5000億ドル(約514兆円)に上るバランスシートの縮小に着手したばかりである。
また、米国株式市場はダウ平均で23,516.26 (11月2日終値)と最高値を更新し続け、バリエーションからは、かなりの高水準である。株価は、大詰めを迎えた米議会の予算審議を見ながら短期的には、じり高の展開を続けようが、バブルの再燃という声すら一部にはある。これまで、我慢に我慢を重ねて金融政策の舵取りをしてきたFRBには、寛容な中央銀行という印象が強いが、利上げの判断を迫られる局面はあるだろう。その状況に、パウエル新議長が、どのように指導力を発揮していくのかが注目される。