賃料は「次第に低下する」ことを想定すべき
収支計画は、あくまで将来を予測してのシミュレーションです。それぞれの項目の数字をいくらにするかで、将来の収支は大きく変わってきます。
いま触れたように、まず重要なポイントは賃料、空室率、修繕費の3つです。
賃料については、周辺の賃貸市場の状況を見ながら設定しますが、素人にはなかなか判断が難しいものです。エリアの相場について熟知した不動産会社などのアドバイスを参考にしましょう。
また、高度経済成長の頃は、2年ごとの契約更新のたびに賃料を引き上げることが一般的でしたが、いまはそのようなことはほとんどありません。
長期的には、賃料が次第に低下していくことを想定してシミュレーションしてみるべきです。例えば、当初2年は募集賃料のままとし、3年目以降は2年ごとに1%ずつ下がるケース、2年ごとに2%ずつ下がるケースなどでシミュレーションするのです。
ただし、「コンパクトアパート」であれば、その低下率は一般的なアパートより低くしても構わないでしょう。
重要なのは「市場の実態」に即した空室率の想定
空室率については、新築時は通常、満室でスタートできますが(新築時に満室にならないとしたら失敗といってもいいでしょう)、次の募集からは一定程度、空室が出る前提で設定します。
入居者が退去すると、次の入居者がすぐ見つかったとしても、引っ越しや室内のリフォームなどで最低でも1カ月程度は空室期間が発生します。まして、春先の需要期以外に退去者が出ると、次の入居者が決まるまで数カ月あくことも珍しくありません。
かといって、慎重を期すあまり空室率を実態以上に高く設定しすぎるのも、収支計画が成り立たなくなってしまうので問題です。市場の実態に即した設定にすることが重要です。例えば、当初2年は0%、3年目以降10年目までは10%、11年目以降は5年ごとに5%ずつアップ、といった条件でシミュレーションしてみます。
なお、管理会社によってはサブリースや一括借り上げを行い、空室の有無にかかわらず毎月一定額が収入として得られることがあります。
その場合は、空室や家賃滞納の心配もありません。しかし、サブリースの賃料は周辺相場より1〜2割安く、また将来、値下げされたり、契約解除になることもあります。シミュレーションではそうした事態も想定してみるべきでしょう。
修繕費については、新築時にはあまり気にしない方もいますが、意外に大きな金額になります。
例えば、入居者の入れ替え時には壁クロスを貼り替えたりする原状回復費用がかかります。また、エアコンや給湯器などの設備も10年を過ぎると故障したり取り替えが必要になったりします。
さらに、20年くらいすると建物の屋根や外壁などの大規模修繕工事が必要になってきます。その間にも、大地震や土砂災害などによる被害が発生するリスクがあります。
ただ、これもあまり慎重になりすぎると、そもそも不動産投資なんてしないほうがいいということになりかねません。
妥当な見通しについては、多くのアパートを管理している管理会社など専門家の意見を聞いてみるとよいでしょう。