「ちょっとした英語」が客を安心させ、客単価を上げる
前回の続きです。
でも、勇気を振り絞って店に入って来るお客様もいるかもしれません。海外からの私の友人も、そんな観光客の一人でした。
店内に入るとお寿司の写真付きの英語メニューを見せられ写真を見ながら、何とか注文します。しかし、出されたお寿司はなぜか2貫。初めてお寿司屋さんに入った彼は「1回のオーダーで同じ寿司が2貫出される」というシステムを知りませんでした。
そのあとは、誰も話しかけてこない。いわば放っておかれるような状況になります。英語が不得意だからでしょうか。スタッフは「英語で話しかけないで」オーラを発しています。これではおもてなしの精神に悖(もと)るだけでなく、確実に得られる売り上げを自ら手放していることになります。
これは、お客様に満足していただけなかったという「おもてなし」の失敗例ではなく、「ビジネス」の話でもあるのです。
そのときにお客様に向き合い、メニューを指さし、笑顔でThis is very popular.「これ、人気がありますよ」と言ってあげれば、きっとそれを注文するでしょう。Some more? 「もう少しいかがですか?」と聞いてあげるのもよし。そのひと言で、お客様の気分は良くなり、同時に客単価は上がります。
このお客様は再び友人を伴って来るかもしれません。すなわち「リピート率」も上がります。お客様にひと声かけるハート・コミュニケーションが、客単価(売り上げ)とリピート率「ビジネス」を上げることになるのです。
現場にいるすべてのスタッフからマネジメント層にいたるまで、個人個人の「おもてなし力」で具体的な数字を上げることができると認識することが必要です。
「おもてなし」はトレーニングで習得可能
「おもてなし」はアバウトで目に見えない感覚的なものであり「右脳的に捉えられる」傾向があります。さらに、個人の能力によるところが大きいと考えられがちです。しかしきちんと体系づけられたトレーニングを行うことによって、誰でも必ず習得することができます。それは、必ずやビジネスにつながっていきます。
これまで「おもてなし」は現場スタッフに任せられている部分も多かったはずです。これでは良い人材、優秀な人材が集まらなければいつまで経っても理想のおもてなしは提供できません。これからは、マネジメント・サイドが「ビジネス」につながる「おもてなし」のシステムを構築していく必要があります。
サービス業に携わる人間は、基本的に人と触れ合うことが好きなはずです。その人たちの仕事のモチベーションを上げるような環境をつくれば、いきおい、良い人材も育っていきます。それは、会社としての大きなメリットとなるはずです。
おもてなし力があることを前提として、同時にビジネス力が求められている時代に突入していることを、現場スタッフもマネジメント・サイドもいま一度心に留めておきたいものです。