ほとんどの金融機関が勧めてくる投資信託ですが、営業マンの「お勧めトーク」を鵜呑みにすると、思わぬ損をしてしまう可能性があります。連載第1回目である今回は、投資信託を「テーマ型」と「絶対収益型」の2つに分類し、それぞれどのような特徴があるのかを見ていきます。

ベンチマーク運用をする「テーマ型」の投資信託

お勧めの投資信託や販売ランキング上位ファンドなどのいわゆる人気の投資信託を購入すると、なぜ損をするのでしょうか。その理由を明らかにするために、まず投資信託を2つのジャンルに分けて解説します。

 

私は投資信託を「テーマ型(相対収益型)投資信託」と「絶対収益型投資信託」に分けています。それぞれについてご説明します。

 

まずテーマ型投資信託についてです。テーマ型投資信託とは、投資対象が特定のテーマになっている投資信託です。たとえば、「インド株式ファンド」なら投資対象はインドの株式です。アメリカの株式には投資しません。「新興国債券ファンド」なら新興国の国々の債券に投資をします。もちろん、投資対象が特定のテーマや地域に限定されることは悪いことではありません。ただ、テーマ型投資信託の多くはもう一つ大きな特徴があります。それは「ベンチマーク運用」を行っているということです。

 

ベンチマーク運用とは、その投資信託を相対的に評価するための「基準」であるベンチマークを設定し、そのベンチマーク以上の運用成績を目指すものです。たとえば日本の株式に投資をするテーマ型投資信託なら、ベンチマークは日本の株式市場全体の動きを表す指数の一つであるTOPIX(東証株価指数)に設定されることが多いです。ベンチマーク運用とはこの「TOPIXと比べて頑張ります」という運用です。

 

市場全体よりも良い運用を目指すということは一見良く聞こえます。TOPIXがプラス7%のときにプラス10%の運用をしてくれたら、投資家としてはうれしい限りです。

 

しかしベンチマークより頑張るとは、たとえばベンチマークであるTOPIXがマイナス30%のときに、マイナス27%だったら「頑張りました」ということです。

 

「増やしたい」と考える投資家の立場からすると、この考え方は違和感がありませんか。「信じて託している」のにマイナス27%で胸を張られては、託す意味がありません。

日本には少ない「絶対収益型」の投資信託の特徴とは?

一方、絶対収益型投資信託とは、市場の動きとは関係なく資産を増やすことを目指しています。もちろんベンチマークは設定しません。「相対」に対する「絶対」であり、絶対に儲かるという意味ではありません。投資家は資産を増やすために「託す」わけですから、投資した資産が減らずに、投資額より増えることを望むのは当たり前の感覚です。この実現を目指すことこそ運用会社の付加価値になると思います。

 

日本でもこのような付加価値の提供を目指す投資信託が徐々に増えてきてはいます。しかしベンチマークと比べて相対的に増えたか減ったかで運用する投資信託があまりにも多いため、あえてこのような呼び方をしています。

 

[図表]テーマ型(相対収益型)投資信託と絶対収益型投資信託

日本の投資信託のほとんどはベンチマーク運用をするテーマ型投資信託です。テーマ型投資信託だから悪いということはありません。しかし、テーマ型投資信託で損をする人が多いのです。なぜテーマ型投資信託で損をするのか、次回から詳しく解説していきます。

本連載は、2015年7月24日刊行の書籍『金融機関が教えてくれない本当に買うべき投資信託 』から抜粋したものです。本書は情報の提供および学習を主な内容としたものであり、著者独自の調査に基づいて執筆されています。実際の投資の成功を保証するものではなく、本書を用いた運用は必ずご自身の責任と判断によって行ってください。本書の内容に関して運用した結果については、著者および株式会社幻冬舎メディアコンサルティングはいかなる責任も負いかねます。なお、本書に記載されているデータや法令等は、いずれも執筆当時のものであり、今後、変更されることがあります。

金融機関が教えてくれない 本当に買うべき投資信託

金融機関が教えてくれない 本当に買うべき投資信託

福田 猛

幻冬舎メディアコンサルティング

ここ数年、投資環境が良くなる中で、投資に興味を持ち、株式や投資信託を購入する人が増えています。特に投資信託は「少額投資」や「分散投資」ができる気軽さもあって幅広い年齢層に人気があり、売れ行きは好調です。しかし、…

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