前回に引き続き、買うべき条件を満たした投資信託の例を見ていきます。今回は、中長期の運用に適した投資信託「モルガン・スタンレーグローバル・プレミアム株式オープン(三菱UFJ国際投信)」の特徴を紹介します。

「生活に密着した」世界的企業に集中投資していく

モルガン・スタンレーグローバル・プレミアム株式オープン(三菱UFJ国際投信)は、世界各国の株式で運用する「アクティブ・スペシャリティーズ(プラスαの付加価値を投資家に提供する特徴的な戦略を持った投資信託)」に該当する、中長期の運用に適したファンドです。

 

良い投資信託のポイントのうち「ファンドマネージャーの腕が良い」点と、「集中投資をしている」点の2つのポイントを押さえており、「プレミアム企業」と呼ばれる、以下の3つの特徴を持った世界的企業に集中投資をするファンドです。

 

①ブランド力を持った会社

②赤字になりにくい会社

③豊富な手元資金を持った会社

 

以上のポイントを押さえて厳選すると、下記図表1に挙げるような企業が並びます。

 

[図表1]モルガン・スタンレーグローバル・プレミアム株式オープン(三菱UFJ国際投信)の組入上位10銘柄(組入銘柄数:30)

 

これらの企業にはもう一つ大きな共通点があります。それは、「我々の生活に密着した企業」であることです。

 

たとえば、組入比率2位のネスレは、「キットカット」や「ネスカフェ」で有名なのでほとんどの人がご存じだと思います。では組入比率3位のユニリーバはいかがでしょうか。ご存じの人もそうでない人もいらっしゃると思います。ですが、紅茶の「リプトン」というブランド名を聞けば、ほとんどの人が理解をされると思います。

 

このように、組入銘柄には、「我々の生活になくてはならない、生活に密着した企業」が並んでいます。

生活必需品を取り扱う世界的企業は業績が悪化しにくい

では、なぜこのような会社が中長期の投資対象として適しているのでしょうか。たとえば、トヨタ自動車は、世界的に圧倒的なブランド力を持った自動車メーカーですが、恐らくこのファンドは組入銘柄としては採用しないでしょう。

 

その理由は、一言でいえば「赤字になりにくい」という2つ目のポイントから外れてしまうからです。

 

リーマンショック前には純利益で約1.7兆円を誇り、株価も8000円台で推移したトヨタでさえも、リーマンショック後の2009年には赤字に転落し、株価も2000円台まで下落しています。「高額商品」である自動車等は景気の影響を受け、トヨタのような超優良企業であっても、株価が3分の1程度になってしまうようなこともあります。

 

一方で、生活必需品を取り扱う世界的企業は、景気にかかわらず業績が悪化しにくく、また株価においても堅調なパフォーマンスが期待できることから、中長期投資においては、うってつけの投資対象といえるでしょう。不景気になった際、高額商品である車の買い替えは控えても、生活に欠かせない日用品等は必ず買います。

 

さらに、人々が認知していて、ブランド力がある企業は価格競争にも陥りにくく、利益を出し続けるため、キャッシュを稼ぎ、安定した配当を出すこともでき、企業価値も増大していきやすいのです。この投資の考え方は、世界的に有名な投資家である、ウォーレン・バフェットの投資哲学にも非常に似ています。

 

この投資信託の設定自体は2012年2月であり、2015年5月29日現在における為替ヘッジなしコースの基準価額は1万9345円となっており、設定来から非常に良好なパフォーマンスを維持しています。

 

なお、運用元であるモルガン・スタンレーの同じ運用戦略ファンド(米ドル建て)は1996年からデータを見ることができます。1996年から現在までのパフォーマンス推移を見ると、年間を通してマイナス運用になった年は、リーマンショック時(2008年)のマイナス28%のみであることがわかります。

 

[図表2]モルガン・スタンレーグローバル・プレミアム株式オープンと同運用戦略のパフォーマンス推移

 

このファンドはベンチマークを持っておりませんが、三菱UFJ国際投信の資料によると、2008年の先進国株式指数(MSCIワールド・インデックス)がマイナス41%だったことを勘案すると、相場下落時においても、下値抵抗力の高いファンドであるといえるでしょう。

 

ただ1点、注意すべき点としては、このファンドはキャッシュ戦略を持たないフル投資型の投資信託であることです。リーマンショック時のような株式市場の大きな下落や為替が大きく円高に振れる局面が同時に起こった際には、注意が必要であるといえるでしょう。

 

なお、為替ヘッジを行う運用コースもあります。外貨建て資産について、原則として対円で為替ヘッジを行い、為替変動リスクの低減を図ります。為替変動リスクを抑えたい投資家は「為替ヘッジあり」コースをお勧めします。ただ、常に完全に「ヘッジ」できるわけではないのでその点は留意していただき、目論見書に記載のリスクをご確認ください。

本連載は、2015年7月24日刊行の書籍『金融機関が教えてくれない本当に買うべき投資信託 』から抜粋したものです。本書は情報の提供および学習を主な内容としたものであり、著者独自の調査に基づいて執筆されています。実際の投資の成功を保証するものではなく、本書を用いた運用は必ずご自身の責任と判断によって行ってください。本書の内容に関して運用した結果については、著者および株式会社幻冬舎メディアコンサルティングはいかなる責任も負いかねます。なお、本書に記載されているデータや法令等は、いずれも執筆当時のものであり、今後、変更されることがあります。

金融機関が教えてくれない 本当に買うべき投資信託

金融機関が教えてくれない 本当に買うべき投資信託

福田 猛

幻冬舎メディアコンサルティング

ここ数年、投資環境が良くなる中で、投資に興味を持ち、株式や投資信託を購入する人が増えています。特に投資信託は「少額投資」や「分散投資」ができる気軽さもあって幅広い年齢層に人気があり、売れ行きは好調です。しかし、…

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