今回は、多くのNPOやソーシャルビジネスが悩んできる、「資金繰り」の問題について取り上げます。※本連載は、コミュニティ・ユース・バンクmomo・代表理事・木村真樹氏の著書、『はじめよう、お金の地産地消――地域の課題を「お金と人のエコシステム」で解決する』(英治出版)の中から一部を抜粋し、「新しいお金の流れ」を地域に生み出し、地域の課題を解決するNPOバンクの取組みを紹介します。

NPOが金融機関からお金を借りるのは「非常に困難」

理解・関心が高まり、成功事例もいくつか見られるようになった一方で、NPOやソーシャルビジネスにとって大きな難題であり続けているのが、お金の問題です。

 

言うまでもなく、NPOが行うような事業は、大きな収益を上げることを目的としたものではなく、実際にそのほとんどは、大きな収益を上げられるものではありません。事業の継続のために一定の収入は確保しながらも、利益よりも社会に価値を生み出すこと、課題解決に寄与することを最優先にするのが、多くのNPOやソーシャルビジネスのあり方だと言えるでしょう。

 

そのため、NPOが銀行などの金融機関からお金を借りることは非常に困難です。

 

多くの金融機関は、そもそもNPOを融資先として射程に入れていません。それに、かつてバブル崩壊後に不良債権処理で苦労した経験もあって、昨今の金融機関はリスクをとることに対して慎重になっています。事業が安定している企業には競い合って融資しようとする一方で、経営が不安定な企業、設立から間もない企業、ましてや大きな利益や成長を見込めないNPOやソーシャルビジネスに融資することは、リスクの高いことだと思われるのでしょう。

地元金融機関は、地域の課題解決を目指すNPOを助けよ

しかし、返済確実な、実績ある優良企業ばかりにこぞって融資しようとしても、そうした企業の資金ニーズにも限界があります。現に、超低金利でなんとか融資しようとしても融資が伸びない、というのがここ十数年、日本の金融業界が直面してきた状況なのです。

 

お金を必要としていない企業には競って貸そうとする一方で、お金を切実に必要としているNPOには貸さない。そんな状況があるように思います。

 

地域の課題解決に挑戦しているNPOが、資金が足りないために事業をやめてしまうとしたら、地域にとって大きなダメージです。

 

そして、それは本来、地方銀行や信用金庫、信用組合、労働金庫など、地域に根差して営業している金融機関にとっても望ましくないはずです。彼らにとって、地域のために活動する人を助けることは、本来の役割だとも言えるでしょう。

 

不良債権問題によって、金融機関は財務の「健全性」を追求するようになりました。しかし、金融機関がいくら健全になっても、地域が抱える課題が放置された結果、地域が衰退してしまっては本末転倒です。

 

「地域とともに歩む」といった経営理念を掲げていることの多い地域金融機関。それが建前だけのものでないならば、地域の課題解決に挑むNPOにも目を向けるべきではないでしょうか。

はじめよう、お金の地産地消

はじめよう、お金の地産地消

木村 真樹

英治出版

「お金の流れ」が変われば、地域はもっと元気になる。 子育て、介護、環境…地域づくりに取り組む人をみんなで応援する仕組みをつくろう。 若者たちが始め、金融機関、自治体、企業、大学、そして多くの個人を巻き込んで広が…

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