今回は、NPO・ソーシャルビジネスにおける資金調達の重要性を見ていきます。※本連載は、コミュニティ・ユース・バンクmomo・代表理事・木村真樹氏の著書、『はじめよう、お金の地産地消――地域の課題を「お金と人のエコシステム」で解決する』(英治出版)の中から一部を抜粋し、「新しいお金の流れ」を地域に生み出し、地域の課題を解決するNPOバンクの取組みを紹介します。

地域の課題解決への継続的な取り組みには、資金が必要

ぼくはここ数年、年間170回以上、人前でお話する機会をいただいていますが、講演後の質疑応答などで「ところで木村さんはどうやってご飯を食べているんですか?」という質問をしばしばいただきます。

 

「NPO=ボランティア」のイメージが強いのか、「どうやって運営費を捻出しているかわからない」というお話を金融機関の方からもよく聞きます。確かに「営利を目的としない」NPOのなかには、たとえばバレーボール同好会のような「サークル」も含まれると思います。でも、サークルは「自分たちが楽しむこと」を目的としたコミュニティです。それは趣味や遊びと同じで、自分たちにとって楽しいことなら、自分たちがお金を出すのは当たり前ではないでしょうか。

 

それでは「地域の課題解決」を目的としたNPOやソーシャルビジネスは、その運営にかかる資金をどうやって調達しているのでしょうか。

 

NPOやソーシャルビジネスの資金調達を考えるにあたり、ぼくは大前提が3つあると考えています。1つ目は、「地域の課題解決は時間がかかるからこそ、継続的に取り組むためにも資金調達が必要」ということです。

 

「課題が存在する」ということは、


(1)その解決に誰も取り組んでいない
(2)既存の解決策では不十分

 

のどちらかなのだと思います。その解決策がもうかる話なら、営利企業も取り組んでいるはずです。また、もうからなくても、多くの人が「問題だ!」とすでに認識している課題なら、行政が税金を投入し、解決に挑んでいるはずです。

 

つまり、NPOやソーシャルビジネスが解決に挑む課題は、この両者から漏れたニッチである場合がほとんどです。そうなると、その課題を〝見える化〟し、「これは自分たちの問題だ!」と社会に認知してもらうために、継続的なアプローチが欠かせません。そのためのエンジンとして、NPOやソーシャルビジネス事業者は資金調達に取り組む必要があるのです。

NPO、ソーシャルビジネスの最大の経営資源は「夢」

2つ目は、「NPOは稼いだらダメ、ではない」ということです。むしろ解決に挑むうえで必要な費用はしっかり稼ぐべきです。稼いだお金(利益)を株主等に分配する営利企業と異なり、営利を目的としないNPOやソーシャルビジネス事業者は、稼いだお金(利益)を次の解決策(事業)に再投資します。当然、その事業にかかる費用(家賃、水道光熱費、通信費、印刷費、消耗品費、備品購入費、旅費交通費、人件費など)はなんらかのかたちで調達しなければなりません。

 

そして3つ目は、「その活動に必要なモノは、本当に、お金か?」ということです。先述の大前提とは逆説的に感じるかもしれませんが、NPOなどの事業者が提供するサービスの受益者は、いわゆる社会的弱者であることも多く、対価を直接いただくことが難しいのも事実です。たとえば、途上国の子どもたちを支援している団体が、現地の子どもたちからお金を受け取ることができないのは明白です。

 

NPOやソーシャルビジネスの最大の経営資源は「夢」と言われます。地域課題に対する解決策を〝売り〟、「お金」だけでなく、「人」「モノ」「情報」といった経営資源を集めることができるのが、NPOやソーシャルビジネスの魅力です。つまり、最初からすべてをお金で解決しようとするのではなく、まずは一緒に活動する仲間や支援者を募り、それでもどうにもならないときの最後の手段として、「お金」をとらえるべきではないでしょうか。

はじめよう、お金の地産地消

はじめよう、お金の地産地消

木村 真樹

英治出版

「お金の流れ」が変われば、地域はもっと元気になる。 子育て、介護、環境…地域づくりに取り組む人をみんなで応援する仕組みをつくろう。 若者たちが始め、金融機関、自治体、企業、大学、そして多くの個人を巻き込んで広が…

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