今回は、お金の行き先が見える「NPOバンク」の仕組みとメリットについて見ていきます。※本連載は、コミュニティ・ユース・バンクmomo・代表理事・木村真樹氏の著書、『はじめよう、お金の地産地消――地域の課題を「お金と人のエコシステム」で解決する』(英治出版)の中から一部を抜粋し、「新しいお金の流れ」を地域に生み出し、地域の課題を解決するNPOバンクの取組みを紹介します。

税制優遇の対象となる、公益財団法人への寄付

地域に必要な活動をしているNPOになかなかお金が回らない。金融機関に預けたお金の行き先がわからない。そんな状況への問題意識から、ぼくが名古屋で立ち上げ、運営しているのが「コミュニティ・ユース・バンクmomo」というNPOバンクと、「あいちコミュニティ財団」という公益財団法人です。

 

NPOバンクであるmomoでは、地域の課題解決に挑むNPOやソーシャルビジネスに対する小口の融資を行っています。既存の金融機関が目を向けてこなかった借り手に、低利・無担保でお金を貸しています。

 

あいちコミュニティ財団では、個人や企業から集めた寄付金を、融資よりも寄付が適したNPOやソーシャルビジネスに、助成金というかたちで資金支援をしています。

 

公益財団法人への寄付は税制優遇の対象となるため、お金の出し手にとっては、納税の代わりの選択肢にもなっています。税金は銀行の預金と同様、どうしても行き先に不透明な部分や納得できない部分が生じがちです。自分の納めた税金がどのように使われているか、国や自治体の予算をすべて把握している人はいないでしょう。それなら、応援したいNPOに寄付するほうがいい、と考える人は多いのではないでしょうか。

利子も配当もつかないのに、多くの出資金が集まる理由

momoもあいちコミュニティ財団も、元手となるのは「自分のお金を地域のために役立ててほしい」という思いを持つ人たちのお金です。それをぼくたちは「志金」と呼んでいます。行き先が出し手にはっきり見えるようにして、地域の課題解決に挑む事業者へ提供するのです。

 

[図表]momoの仕組み

 

出資には利子も配当もつかず、寄付金は戻ってきませんが、それでも多くの人が「志金」を持ち寄ってくれるのは、そのお金の行き先が見えているからでしょう。

 

momoやあいちコミュニティ財団では、ウェブサイトやメールマガジン、報告書などを通して、融資先や助成先の情報を詳しく公開しています。出資者や寄付者は、自分の出したお金がどのような事業に使われ、その事業がうまくいっているか、どんな成果を世の中に生み出しているかの情報を得ることができます。実際に事業の現場を見学できる機会もあります。

 

オープンであるということは、それだけ人の目にさらされるということ。おかしなことはできません。融資先や助成先を審査・選考するプロセスは、金融機関の方に驚かれるほどしっかりと設計しています。

 

ありがたいことに、momoもあいちコミュニティ財団も、多くの方に支持していただけるようになりつつあります。すでに創業から10年以上続けてきたmomoは、これまでに1億4000万円以上貸してきましたが、貸し倒れはゼロ。あいちコミュニティ財団も設立から5年目を迎え、さまざまな基金が立ち上がり、思いのこもったお金を地域で生かすという使命のために着実に前進しています。

はじめよう、お金の地産地消

はじめよう、お金の地産地消

木村 真樹

英治出版

「お金の流れ」が変われば、地域はもっと元気になる。 子育て、介護、環境…地域づくりに取り組む人をみんなで応援する仕組みをつくろう。 若者たちが始め、金融機関、自治体、企業、大学、そして多くの個人を巻き込んで広が…

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