今回は、地域の様々な課題解決を目指す「共助社会づくり」について見ていきます。※本連載は、コミュニティ・ユース・バンクmomo・代表理事・木村真樹氏の著書、『はじめよう、お金の地産地消――地域の課題を「お金と人のエコシステム」で解決する』(英治出版)の中から一部を抜粋し、「新しいお金の流れ」を地域に生み出し、地域の課題を解決するNPOバンクの取組みを紹介します。

行政の手が回らない課題には「住民の力」が必要

地域や社会が今後ますます深刻な状態になることが見えているなか、求められるのは公共事業の見直しや自治体職員の削減といった行政側の改革だけではありません。市民の側にも変化が求められています。

 

みなさんは、自分の住んでいる自治体に今どんな課題があり、どんな取り組みがなされているか、どのくらいご存じでしょうか。

 

テレビで取り上げられる話題しか知らない、あるいは地方議会の選挙のときぐらいしか意識しないという方も多いかもしれません。

 

住民が自分の地域の状況に無関心・無理解では、必要な改革もきっと進みにくいでしょう。非効率な公共サービスの削減に反対するなど、かえって将来に問題を先送りするような誘因も働きかねません。ぼくたちは自分の暮らす地域の状態について、この先の見通しも含めて関心を持ち、理解と問題意識を持たなくてはなりません。

 

もちろん、悲観するだけでは状況は改善しません。状況を少しでもよくするための具体的な行動が必要です。行政の手が回らない課題や、行政が有効に機能していない領域を、住民が自治と共助(助け合い)によって補っていくこと。どの自治体も大幅な歳入増加が見込めないなか、それは今後ますます求められていくはずです。

年々増加する「社会課題の解決に挑む」NPO法人

ぼくたちにはそれぞれ、選挙で投票することのほかにもできることがあります。現に、そのような意識を持つ人、行動する人は増えています(この本を読んでいるあなたもその一人かもしれません)。

 

たとえば、さまざまな社会課題の解決に挑むNPO法人(特定非営利活動法人)は年々増加しており、その数は5万を突破しています(コンビニエンスストアの店舗数が約5万と言われています)。

 

社会起業家が注目され、病児保育の問題やひとり親支援に取り組むNPO法人フローレンス等の革新的な成功例により、ソーシャルビジネスに対する一般の認知も広がりました。

 

一般の企業でもCSR(企業の社会的責任)を果たすための社会貢献活動はかなり一般化しましたし、仕事で培った専門性を活かして社会貢献を行うボランティア「プロボノ」の活動も広がってきました。新卒採用でも、近年は「社会に貢献できる」ということが大きなアピールポイントになっているようです。

若い世代を中心に高まる「地域をよくする」ことへの関心

地域に目を向けても、各地でさまざまな地域づくりの活動が行われています。過疎化した離島でありながら斬新な取り組みで人口増加を果たしている島根県海士町など、地域活性化の成功例が注目されたり、「地域おこし協力隊」に多くの若者が参加したりと、「地域をよくする」ということへの関心や、「共助」の意識は、特に若い世代を中心に、高まっているように感じます。

 

こうした流れを政治も後押ししています。安倍政権が掲げた「一億総活躍」など、個別の政策への意見は人それぞれだと思いますが、自民党は「共助社会づくり」の必要性を唱え、地域住民や地縁団体などのさまざまな主体が助け合い、支え合い、地域の諸課題をともに解決していく動きが広がることが重要だとしています。そして、なかでも大きな役割を果たし得るのが、NPOやソーシャルビジネスだという見方を示しているのです。

はじめよう、お金の地産地消

はじめよう、お金の地産地消

木村 真樹

英治出版

「お金の流れ」が変われば、地域はもっと元気になる。 子育て、介護、環境…地域づくりに取り組む人をみんなで応援する仕組みをつくろう。 若者たちが始め、金融機関、自治体、企業、大学、そして多くの個人を巻き込んで広が…

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