税負担を減らすため、第三国を経由した投資が増加
近年のアジア圏の経済成長は目を見張るものがあり、日系企業の進出件数も年々増加しています。広くアジア圏に拠点展開している日系企業の中には、日本からの直接投資ではなく、他の海外拠点からの投資の形態により、フィリピンに進出するケースも出ています。
具体的には、アジア圏に複数国にわたって拠点展開している企業などは、その各国の海外子会社を統括するため、シンガポールや香港に「地域統括会社(RHQ)」を設置し、これらの国から更にアジア各国に投資をするケースも増えてきています。
シンガポール、香港を中心とするこのような形態を取るメリットは、さまざまな要素が考えられますが、特に大きなメリットとしては、シンガポールや香港は、タックス・ヘイブン(軽課税国)と呼ばれ、所得に対する税負担が他の近隣諸国に比べ低く、これらの国に利益を集約させることにより、グループ全体の租税負担を大きく引下げることができる点です。
日本の法定実効税率は約3割と、諸外国に比べても税負担が重くなるため、多くの日系企業がこのような投資スキームを採用しています。
企業利益が海外に流出し続け、税収が減少する事態に
しかし、そのような利益集約により得をするのは企業側だけであって、国側としては利益の海外流出による税収の減少という、深刻な問題が発生しました。
この問題に対処するため、課税逃れを目的にシンガポール、香港といった軽課税国に子会社を設立し、利益を不当に海外に留保した場合に、日本側においてその留保利益を課税するという制度ができました。これが、いわゆる「タックス・ヘイブン対策税制」と呼ばれる制度です。