企業の資金調達ニーズの高まりで、長期金利に上昇圧力
ここまで、長期金利の決まり方や金利と期間の関係をみてきました。長期金利は多くの要因により決まりますが、決定要因として特に重要なのは、市場参加者の経済成長や物価に対する「予想・期待」です。
企業が長期資金を調達するのは、設備投資や他の企業を買収するなど、長期的な事業に投資するためです。当然のことながら、その事業への投資から得られる収益が借り入れコストを上回ると考えるので、企業は長期資金を借り入れます。
長期的に高い成長が期待できる国ならば、魅力的な投資機会が多く存在しますので、企業の資金調達ニーズが高まりやすく、長期金利に上昇圧力がかかることになります。逆に、あまり高い成長が期待できない国では、魅力的な投資機会は限定されるため、企業の資金調達ニーズは高まらないでしょう。
[図表1]
「物価上昇率>債券利回り」の予想で長期金利は上昇
投資家が債券を購入(長期資金を運用)するのは、投資家が予想する将来の物価上昇率よりも債券の利回りのほうが高いため、今お金を消費してモノを買うよりも債券で運用するほうが有利になるからです(『60歳までに知っておきたい 金融マーケットのしくみ』39ページの図表2-3参照)。低い物価上昇率を予想する投資家が多いと、資金運用ニーズが高まり、長期金利は低下します。逆に、物価上昇率が債券利回りよりも高くなると予想する投資家が多いと、資金運用ニーズが後退し、長期金利は上昇します。
このように、長期資金の調達者と運用者が将来の経済成長(景気)や物価上昇率を予想あるいは期待して行動することが、長期金利に大きく影響します。
[図表2]