景気動向、物価動向、金融政策、為替動向・・・
前回、長期金利は名目GDP成長率と似たような動きをすると述べましたが、両者がぴったり同じように動くわけではありません。長期金利は景気・物価以外のさまざまな要因の影響を受けます。主な変動要因を、図表1にまとめました。
[図表1]長期金利の主な変動要因
経済環境によっては、図表1のような動きをしない場合がありますし、同時にすべての項目が金利上昇方向のみ(あるいは金利低下方向のみ)を示すわけではありません。また、市場参加者が何に注目しているかという観点も重要です。
個々の変動要因についてみていきますが、長期金利と、①景気動向、②物価動向、③金融政策の関係については、すでに説明した通りです。今回は⑥債券需給を取り上げ、④為替と⑤海外金利は、次回で説明します。
債券需給とは「市場センチメント」を反映したもの
さて、⑥債券需給ですが、『60歳までに知っておきたい 金融マーケットのしくみ』の中で市場価格は需要と供給で決まると説明してきましたので、債券需給が変動要因というのはあまりにも当然のことです。ここでは少し狭い意味で需給を捉え、ファンダメンタルズを背景とした市場参加者の売り・買いの動機を切り離して考えましょう。
例えば、1998年11月から1999年2月にかけての日本の金利急上昇(債券価格の急落)は、大蔵省資金運用部(当時)がそれまで続けていた国債買い入れを停止すると発表したことで引き起こされました(下記図表2参照)。安定的な国債の買い手であった資金運用部が買い入れを止めると、国債の需要と供給のバランスが崩れてしまいます。これを懸念して売りが売りを呼ぶ展開となったのです。
[図表2]国債買い入れ停止の告知だけで金利が急上昇
このように、債券需給は市場で突き合わされる債券売りと債券買いのバランスであり、市場参加者の心理的複合体、すなわち市場センチメントを反映したものです。そのため、リクツで考えるファンダメンタルズ分析ではなく、リクツに合わない市場参加者の気持ちまで対象とするテクニカル分析の領域といえるでしょう(『60歳までに知っておきたい 金融マーケットのしくみ』16ページ参照)。