長期金利を動かす「景気・物価以外」のさまざまな要因

今回は、長期金利を動かす「景気・物価以外」のさまざまな要因について見ていきます。※本連載は、瀬良礼子氏をはじめとする三井住友信託銀行マーケット事業の著書、『60歳までに知っておきたい 金融マーケットのしくみ』(NHK出版)の中から一部を抜粋・再編集し、「債券市場」の見方・読み方をご紹介します。

景気動向、物価動向、金融政策、為替動向・・・

前回、長期金利は名目GDP成長率と似たような動きをすると述べましたが、両者がぴったり同じように動くわけではありません。長期金利は景気・物価以外のさまざまな要因の影響を受けます。主な変動要因を、図表1にまとめました。

 

[図表1]長期金利の主な変動要因

 

 

経済環境によっては、図表1のような動きをしない場合がありますし、同時にすべての項目が金利上昇方向のみ(あるいは金利低下方向のみ)を示すわけではありません。また、市場参加者が何に注目しているかという観点も重要です。

 

個々の変動要因についてみていきますが、長期金利と、①景気動向、②物価動向、③金融政策の関係については、すでに説明した通りです。今回は⑥債券需給を取り上げ、④為替と⑤海外金利は、次回で説明します。

 

債券需給とは「市場センチメント」を反映したもの

さて、⑥債券需給ですが、『60歳までに知っておきたい 金融マーケットのしくみ』の中で市場価格は需要と供給で決まると説明してきましたので、債券需給が変動要因というのはあまりにも当然のことです。ここでは少し狭い意味で需給を捉え、ファンダメンタルズを背景とした市場参加者の売り・買いの動機を切り離して考えましょう。

 

例えば、1998年11月から1999年2月にかけての日本の金利急上昇(債券価格の急落)は、大蔵省資金運用部(当時)がそれまで続けていた国債買い入れを停止すると発表したことで引き起こされました(下記図表2参照)。安定的な国債の買い手であった資金運用部が買い入れを止めると、国債の需要と供給のバランスが崩れてしまいます。これを懸念して売りが売りを呼ぶ展開となったのです。

 

[図表2]国債買い入れ停止の告知だけで金利が急上昇

 

(注)10 年国債利回りは国債指標銘柄
(出所:Bloomberg)
(注)10 年国債利回りは国債指標銘柄
(出所:Bloomberg)

 

このように、債券需給は市場で突き合わされる債券売りと債券買いのバランスであり、市場参加者の心理的複合体、すなわち市場センチメントを反映したものです。そのため、リクツで考えるファンダメンタルズ分析ではなく、リクツに合わない市場参加者の気持ちまで対象とするテクニカル分析の領域といえるでしょう(『60歳までに知っておきたい 金融マーケットのしくみ』16ページ参照)。

 

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筆頭執筆スタッフ・プロフィール:
瀬良 礼子(三井住友信託銀行 マーケット・ストラテジスト)
1990年に京都大学法学部卒業後、三井住友信託銀行に入社。公的資金運用部にて約6年間、受託資産の債券運用・株式運用・資産配分業務に携わった後、マーケット企画部で自己勘定の運用企画を担当。以後、約20年にわたり、為替・金利を中心にマーケット分析に従事している。また、2000年に「金融マーケット予測ハンドブック」の執筆スタッフの一員となり、継続して改訂を担当している。2013年発行の第5版以降、執筆者代表として全体の監修も担当している。
情報が付加価値の源泉との意識をもちつつ、「経済統計など実際のデータをあたりながら、金利・為替市場の現状を読み解き、未来への展望を探る」、というスタイルで市場分析・予想を行っている。

著者紹介

60歳までに知っておきたい 金融マーケットのしくみ

60歳までに知っておきたい 金融マーケットのしくみ

三井住友信託銀行マーケット事業

NHK出版

株や投資信託で儲けたい人も、退職金を運用したい人も、NISAやiDeCoをお得に使いたい人も、まず必要なのは金融の知識! 現役マーケット・アナリストである著者が、わかりやすく金融のしくみを伝授する。著者の資産運用成績も…

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