国債の大量発行が「利回り上昇」につながっていない理由

今回は、国債の大量発行が「利回り上昇」につながっていない理由を見ていきます。※本連載は、瀬良礼子氏をはじめとする三井住友信託銀行マーケット事業の著書、『60歳までに知っておきたい 金融マーケットのしくみ』(NHK出版)の中から一部を抜粋・再編集し、「債券市場」の見方・読み方をご紹介します。

国債大量発行が続き、暴落を心配する声があるが・・・

日本では国債大量発行が続き、政府債務が膨らんでいることから、国債暴落を心配する声が聞かれることがあります。しかし、現実は、国債利回りは非常に低い水準で推移しています。なぜでしょうか。

 

まず、実体経済・金融経済の全体像のなかで、政府部門がどのように機能しているのか確認しておきましょう。

 

政府部門が財政・行政サービスを通じて所得再分配・資源配分・経済安定化などの機能を担っているということについて、『60歳までに知っておきたい 金融マーケットのしくみ』の第1章で詳述していますが、とりわけ金融市場との関係では、経済安定化の機能が注目されます。

 

政府部門は、景気が悪化したときに、公共投資などの財政出動により雇用を増やし家計の消費を支援することで、経済の安定化を図ります。財政出動のための資金は、税収で足りなければ借金でまかないます。つまり、国債を発行して資金を調達します。したがって、市場のしくみで考えれば、資金調達が増えると、国債価格に下落圧力(国債利回りに上昇圧力)がかかるはずです。

 

[図表]発行は増えても利回りは低下傾向~日本の国債発行額と長期金利

 

国債の大量発行を受け止める資金運用ニーズが存在する

しかし、上記の図表に示したように、日本では、国債発行額が大幅に増えているにも関わらず、国債利回り(長期金利)は低下傾向となっています。

 

この謎を解くには、国債を発行する側だけに注目するのではなく、国債を購入する側に目を向ける必要があります。1990年のバブル崩壊以降、企業部門の事業拡大意欲が低下し資金需要が大幅に後退したことで、銀行が家計部門から預かっている資金が国債へ流入したのです。国債の大量発行を受け止めるだけの資金運用ニーズが、日本にはあったのです。

筆頭執筆スタッフ・プロフィール:
瀬良 礼子(三井住友信託銀行 マーケット・ストラテジスト)
1990年に京都大学法学部卒業後、三井住友信託銀行に入社。公的資金運用部にて約6年間、受託資産の債券運用・株式運用・資産配分業務に携わった後、マーケット企画部で自己勘定の運用企画を担当。以後、約20年にわたり、為替・金利を中心にマーケット分析に従事している。また、2000年に「金融マーケット予測ハンドブック」の執筆スタッフの一員となり、継続して改訂を担当している。2013年発行の第5版以降、執筆者代表として全体の監修も担当している。
情報が付加価値の源泉との意識をもちつつ、「経済統計など実際のデータをあたりながら、金利・為替市場の現状を読み解き、未来への展望を探る」、というスタイルで市場分析・予想を行っている。

著者紹介

連載基礎から学ぶ金融マーケット~債券市場と長期金利の関係

 

 

60歳までに知っておきたい 金融マーケットのしくみ

60歳までに知っておきたい 金融マーケットのしくみ

三井住友信託銀行マーケット事業

NHK出版

株や投資信託で儲けたい人も、退職金を運用したい人も、NISAやiDeCoをお得に使いたい人も、まず必要なのは金融の知識! 現役マーケット・アナリストである著者が、わかりやすく金融のしくみを伝授する。著者の資産運用成績も…

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧