国債発行が増えても、家計部門の貯蓄でまかなえる日本
前回、日本政府の国債大量発行を受け止める資金ニーズがあると述べました。そこで今回は、大量発行にも関わらず、国債利回りが低下を続けた背景をデータで確認してみましょう。
下記の図表1のグラフは、日本の国内非金融部門の金融資産と負債のバランスを表したものです。なお、残高は名目GDPに対する比率で表示されています。
[図表1]日本の金融資産・負債バランス(国内非金融部門)
このグラフを見ると、家計部門の純金融資産残高(金融資産残高から負債残高を差し引いたもの)が、企業部門(非金融法人)と政府部門(一般政府)の純負債残高(負債残高から金融資産残高を差し引いたもの)の合計を上回って推移していることがわかります。しかも、企業部門の負債がほとんど増えていないため、政府が国債発行を増やしても、家計部門の貯蓄で十分まかなうことができました。
家計の金融資産より政府と企業の負債が多いギリシャ
一方、下記の図表2のグラフはギリシャの国内非金融部門の金融資産・負債バランスを示したものです。
[図表2]ギリシャの金融資産・負債バランス(国内非金融部門)
ギリシャは、政府と企業の負債のほうが家計の金融資産よりも多く、しかも2008年には政府の負債が家計の金融資産を上回ってしまいました。
そのような状況下で、2011年に政府債務への危機感が台頭し、国債利回りが急上昇(価格が急落)しました。株価も大幅に下落しましたが、ギリシャはユーロを採用していたため、通貨はさほど下落しませんでした。もしも通貨統合前の通貨単位であるドラクマだったら、通貨も大幅に下落していたはずです。
日本は家計部門の貯蓄が潤沢なので、たとえ政府債務残高が名目GDP比でみて世界最大だとしても、国債利回りが急上昇することはなさそうですが、金融資産・負債の状況が変化すれば、日本売りのトリプル安(債券安・株安・円安)の可能性もゼロとはいえなくなります。