景気や物価、金融政策とも無縁ではないが・・・
ここからは、長期金利に焦点を絞りましょう。なお、ここでいう長期金利は、特筆しない限り、10年国債利回りを指します。
長期金利も、前回の記事の図表に整理したように、景気・物価といったファンダメンタルズの影響を受けますし、中央銀行の金融政策とも無縁ではありません。しかし、金融政策の影響を強く受ける短期金利とは決まり方が異なることに注意が必要です。
初めに、10年物の長期金利について、翌日物金利を出発点として、10年分の翌日物金利の「予想」が積み重なって10年物金利になると考えてみましょう。
政策金利の影響は小さく、「予想」の影響は大きくなる
短期金利は予想の期間が短いために出発点に近く、現在の金融政策の影響を強く受けます。しかし、5年・10年・20年と、予想の期間が長くなると、景気・物価の状況が変わり、金融政策も変化するでしょう。長期間の翌日物金利予想には、短期と比べて不確かさが増します。そのため、その不確かさを市場参加者の「予想や期待」が補うことで、長期金利が形成されます。
したがって、短期金利は中央銀行が現在設定している政策金利の影響を強く受けますが、「予想」の影響度が小さくなり、長期金利は現在の政策金利から受ける影響は低下し、「予想」の影響度が大きくなります(図表参照)。
なお、資金の貸し手が長期間にわたって資金を自由に使えなくなることへの「見返り」が、長期金利のほうが短期金利よりも大きく反映されるため、金利の決定要因として考慮する必要があります。ただし、「予想」と「見返り」の部分を明確に分離することはできませんので、長期金利の決定要因の一つとして理解しておけば十分でしょう。
[図表]日本の代表的な金利と金利決定要因のイメージ