「今日は達成できた。明日もがんばろう」を繰り返す
小さな目標をコツコツ積み上げてグランドフィナーレに向かう。このことを具体的に説明してくれているのは、私も敬愛する経営者のひとりであるヴァージン・グループの総帥リチャード・ブランソンです。彼はあるとき、記者から次のような質問を受けました。
「起業資金として60ドル受け取ったら、どう使う?」
それに対する彼の答えがユニークで、しかも問題の本質を的確に説明しています。
「その時点で有名人なら、1ドル札にサインして1枚20ドルで売る。そこで20ドル札を受け取ったら、それにまたサインして50ドルで売る」
普通なら「起業資金60ドルを、どうやって100万ドルにするか」といったように、単純に考えるでしょう。しかし、リチャードの発言こそまさしく中締めの論理で、小さな目標をコツコツ積み上げる手法そのものです。
やがて膨らんだ資金を元手に、もっと効率的な利益を生む事業に投資すればいいわけです。そうすれば、やがてミリオンダラーまで成長することでしょう。
小さな目標を積み上げるということでは、ブライアン・トレーシーの論法も明快です。ダイエットを例にとり、ブライアンは具体的な数字を示して成功のイメージをわかりやすく伝えてくれています。
「1日20グラムのダイエットができれば1ヵ月で600グラム。これで年7キログラムに達します」
ほかにも、
「1日300円の節約で年10万円」
「1日15分の読書で年15冊読破」
など、ブライアンは私たちが目標に立てやすい生活に密接な事柄について、コツコツ積み上げるための考え方を明示しています。これらの「20グラム」「300円」「15分」などが中締めです。「今日は達成できた。明日もがんばろう」この繰り返しでグランドフィナーレの日に向かっていくのです。
小さな目標は、具体的でクリアしやすいものを
ここに見た数値化は、アメリカでトップのマーケティングコンサルトであるジェイ・エイブラハムの教えで、もっと理解を深められます。
「1つひとつの要素をきっちりと数値化して把握することで、機会の損失や無駄が見えてくる」
彼はマーケティングの専門家なので、その例示する内容もマーケティングに関することになりますが、それは私たちでも応用可能な論理です。かいつまんで説明すると、ある商品を売るときの売上総額は、
「顧客数×平均取引額×購入頻度」
で示されます。3つの数字を掛け算するだけのシンプルなものです。ここで3つの数字全部を10パーセントずつ上乗せできたら、どうなるでしょう。増加率は約33パーセントに達します。先の数字3つを中締めの「目標」と置き換えると、それを順次達成していけばゴールにたどり着きやすくなる、というのが私の解釈です。
3つを同時にクリアしようとすると「高すぎる目標」になってしまうので、1つずつコツコツとクリアしていくようにするのです。私自身は、日本だけではなく海外でも事業をしていますが、その目標は大きく「世界中でワールドワイドにビジネスを展開すること」です。しかし、いきなり世界と言っても広すぎるし大きすぎます。
そこで私は「まずはアジア」と小さな目標を定め、さらに「アジアのなかで日本に近い中国や台湾、韓国といった国々」というように中締めを多用しています。このうち中国ひとつとっても広大なマーケットですから「中国のなかの上海」「中国のなかの北京」といったように、さらにこまかくしています。
すると、上海や北京を見ていたら、同じアジアでももう少し日本から遠いシンガポールなどに接点が生まれたりしています。これも中締めに含んでしまうのです。コツコツとクリアしていくと言えば、ジェイ・エイブラハムの実践してきたことが、私たちにもできそうと思わせてくれる模範解答です。
「今では私は、言葉の正確さについて高い評価をいただいております。その最初の一歩は、知らない単語を毎日5つだけ、覚えるようにしたことにすぎません」
「毎日5つ」。この具体的かつクリアしやすい中締めの繰り返しが、世界的に評価される言語表現能力というグランドフィナーレを実現したのです。