気に入った物件でも、予算オーバーなら借りられない
「コンパクトアパート」が賃貸住宅市場における「ブルー・オーシャン戦略」であることを理解するには、従来の賃貸住宅市場の傾向を知ることが必要です。
賃貸住宅の入居者は一般に、学生や単身の社会人です。最近は、外国人や高齢者など新しい借り手も存在感を増しています。こうした入居者が賃貸住宅を選ぶ際の3大基準は「賃料」「立地」「間取り」だといわれます。
まずは「賃料」です。賃貸住宅市場では、沿線や最寄り駅ごとに賃料の相場があり、「この駅周辺でこの広さならこれくらい」という目安があります。そして、駅からの距離や周辺環境、間取りなどによって賃料には差が出ます。
入居者は、収入などに応じて自分が支払える賃料の上限と、それらの条件とのバランスを考えながら物件を決めるわけです。いくら気に入った物件があっても、賃料が予算を超えていれば借りるわけにはいきません。
最近の傾向として、賃料についてはより厳しく判断する入居者が多いようです。アベノミクス以降、景気は上向いているといわれますが、所得はさほど上がっていません。サラリーマンの給与は統計上、むしろ下がっているくらいです。
少々、無理をしてでも条件の良い、それゆえ賃料も高い物件より、他の条件はやや劣ってでも賃料の安い物件から決まるケースのほうが多いのです。
間取り、広さ、築年数も優先度としては低め
「立地」については、学生なら自分が通う学校の周辺や沿線で探すのが一般的です。最近は、首都圏でも郊外から都心にキャンパスを移す大学が増えており、学生も郊外から都心に引っ越す傾向があります。
また、社会人であれば勤める会社への通勤に便利な沿線が優先されます。特に2011年の東日本大震災の際には、帰宅困難者が大量に発生したり、計画停電が実施されたりしました。その経験から、会社により近いエリアに引っ越す社会人が増えたといわれます。マイホームの住み替えはそう簡単にできませんが、賃貸住宅なら簡単です。
今後も、こうした流れは続くと考えられます。
「間取り」についていえば、こだわるのは主にファミリー層です。子どもがいれば部屋数が必要ですし、子育て中であれば親が子どもと家にいる時間も長くなります。日当たりに影響する部屋の向きはどうか、家事などの動線はどうか、など細かい点までチェックする人も少なくありません。
逆に、学生や単身のサラリーマンなどは間取りや広さのこだわりはそれほど強くないといえるでしょう。
日中は学校や会社に出かけており、食事も外で済ませ、部屋には寝に帰るだけという人も多いからです。「賃料」や「立地」に比べると優先順位は低いのです。
そのほか、学生や単身のサラリーマンなどにとっては、築年数、初期費用(礼金・敷金など)も「賃料」や「立地」に比べると優先順位は低くなります。