前回は、在宅介護の助けとなる「介護休業給付金」制度等の概要を説明しました。今回は、各家庭の条件に合った「最適な介護施設」を選ぶ秘訣を紹介します。

自治体や支援センターに相談し、施設のリストを確認

要介護度が上がるなどで在宅介護が難しくなってきた場合は、施設入所を検討します。

 

本人や家族が希望する施設の候補がとくにない場合は、自治体の窓口や地域包括支援センターに相談に行き、予算内で入所できそうな施設のリストを見せてもらいましょう。

 

しかし、窓口では個別の施設についてそれほど詳しく把握していないことも多いので、面倒でも実際に施設をいくつか回り、価格帯やサービス内容、環境などをチェックする必要があります。

 

本人や家族が介護サービスの内容を比較検討しやすいように、厚生労働省が「介護サービス情報公表システム」(http://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp)をウェブ上で公開しています。各事業所の特色や運営状況、相談・苦情などへの対応、安全・衛生管理についても閲覧できるので、ぜひ活用してみてください。

 

同名のスマートフォンアプリもあり、質問に答えていくと自分に合った事業所が検索できるシステムなので、チェックしてみましょう。

特別養護老人ホーム(特養)と有料老人ホームの違い

待機者が多い特別養護老人ホームか、費用の高い有料老人ホームか……この選択は、多くの人が悩むところです。

 

特別養護老人ホームは待機者が多く入所は難しいと思われがちですが、要介護3~5という条件つきになったため、全体の申し込み数が減少傾向にあり、早ければ数カ月で入所できる場合もあります。

 

私の法人でも特別養護老人ホームの待機者数は以前よりも減少してきています。最初に有料老人ホームに入所した利用者が、要介護度が上がってきたのでそのまま同じ建物内の特別養護老人ホームへと移行でき、月額の費用を5万~7万円程度抑えられたというケースもあります。

 

また、有料老人ホームも、施設数が増えるにつれて、入所一時金を0円にしたり、月額料金を安く設定したりするところも増えており、特別養護老人ホームとの費用面での差は以前より小さくなっています。

 

ただし、特別養護老人ホームと有料老人ホームは、医療ケアの面で大きな違いがあります。特別養護老人ホームには医師の常勤が必須ではないため、医師がいない施設もあります。そのため容体が急変した時は提携病院に搬送されます。

 

また、嘱託の医師と契約する施設が多いため、医療的ニーズの高い高齢者を預かるのは難しくなります。一方の有料老人ホームではクリニックを併設したり、看護職員を24時間配置したりして、医療的ニーズの高い人を優先的に受け入れる施設も増えています。

本連載は、2017年6月23日刊行の書籍『人生を破滅に導く「介護破産」』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。介護保険サービスの金額は、社会福祉法人サンライフの金額を参考に記載しています。実際の金額は利用する施設などへお問い合わせください。本来、施設の種類によって「入居」「入所」と書き分けるべきですが、文章の分かりやすさに配慮し、すべて「入所」に統一しています。

人生を破滅に導く「介護破産」

人生を破滅に導く「介護破産」

杢野 暉尚

幻冬舎メディアコンサルティング

介護が原因となって、親のみならず子の世帯までが貧困化し、やがて破産に至る──といういわゆる「介護破産」は、もはや社会問題の一つになっています。 親の介護には相応のお金がかかります。入居施設の中でも利用料が安い…

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