前回に引き続き、在宅で介護をしたい際に利用可能な介護保険サービスを見ていきましょう。今回は、介護と支援が必要な両親が、息子の自宅近くに引っ越した場合等のシミュレーションを紹介します。

引っ越し、デイサービスも子どもの支援があれば可能

前回の続きです。

 

②息子の自宅近くに引っ越してデイサービスを利用する

 

この場合、両親に、東京に住む息子の自宅近くに引っ越してもらいます。両親の自宅は売却し、両親の住居を息子宅の近くで探します。住居は高齢者向けの住宅でなくても、安価な賃貸住宅で構いません。

 

その上で父親がデイサービスを利用します。この場合、父親はデイサービスを週4回利用、訪問看護は週1回利用することにします。デイサービスの月額利用料金は1万8000円程度、デイサービスの食費が1万円程度、訪問看護と福祉用具のレンタルを含め、介護費用は月額4万5000円ほどになります。

 

家賃、光熱水費などを年金収入でまかなうことにすれば、息子が支援できる金額ではないでしょうか。それも厳しければ両親の自宅の売却費用をあてれば十分まかなえるはずです。

 

[図表1]ケース2の場合 父親(要介護3)と母親(要支援1)のふたり暮らし

特別養護老人ホームは、従来型4人部屋の多床室が良い

③息子が母親を引き取り、父親は東京の施設を探す

 

住宅事情などで両親ともに引き取ることは無理でも、ひとりならなんとかなる場合は、父親を施設に預け、母親と同居することを考えます。この場合も両親の自宅は売却し、費用を抑えるため父親は特別養護老人ホーム(特養)へ入所します。

 

特別養護老人ホームはユニット型の施設を選ぶと費用が高くなるため、従来型4人部屋の多床室を探すといいでしょう。とくに母親が通いやすいところを選ぶようにしてあげましょう。特別養護老人ホームはすぐに入所できるとはかぎらないので、いったん両親ともに息子の家に引っ越し、その上で父親は小規模多機能型居宅介護のショートステイを利用しながら施設を探します。

 

小規模多機能型居宅介護とは、ケアマネジャー、ヘルパー、デイサービス、ショートステイのいずれも利用できるサービスです。月額料金ですべてのサービスが利用できるため、利用者側にはとても使い勝手のよいサービスですが、事業者側の負担が多く経営が難しいため、あまり普及していないのが実情です。

 

このケースのように、首都圏や地方でもある程度の大きさの都市では整備が進んでいるので、調べてみるとよいでしょう。

 

ただし、このサービスは、同じ事業所を利用している要介護者でサービスを共有するため、利用者間の調整が必要です。そのため、必ずしも自分の希望するサービスが利用したいときにすべて利用できるわけではないことは理解しておいてください。

 

小規模多機能型居宅介護を利用すると、デイサービスや訪問介護など、ほかの事業所の介護サービスは利用できませんが、福祉用具や訪問看護は利用できます。ショートステイは条件に応じて連泊が可能ですので、その間に最適な特別養護老人ホームをしっかり選ぶことができます。いったん引っ越すといっても、父親はすぐにショートステイを利用するため、実質、同居するのは母親だけになります。

 

このケースのポイントは、まず引っ越すことで父親の居住地が息子の自宅となり、それによって、息子の家の近くの小規模多機能型居宅介護や地域密着型特別養護老人ホームが利用できるようになるということです。

 

その後、父親が特別養護老人ホームに入所すれば、介護費用は食費や雑費を含めて月額約9万円になるので、同居した母親の生活費を含めても、年金や自宅の売却費でまかなえる計算となります。

 

[図表2]ケース2の場合 父親(要介護3)と母親(要支援1)のふたり暮らし

本連載は、2017年6月23日刊行の書籍『人生を破滅に導く「介護破産」』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。介護保険サービスの金額は、社会福祉法人サンライフの金額を参考に記載しています。実際の金額は利用する施設などへお問い合わせください。本来、施設の種類によって「入居」「入所」と書き分けるべきですが、文章の分かりやすさに配慮し、すべて「入所」に統一しています。

人生を破滅に導く「介護破産」

人生を破滅に導く「介護破産」

杢野 暉尚

幻冬舎メディアコンサルティング

介護が原因となって、親のみならず子の世帯までが貧困化し、やがて破産に至る──といういわゆる「介護破産」は、もはや社会問題の一つになっています。 親の介護には相応のお金がかかります。入居施設の中でも利用料が安い…

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