今回は、「支払日」「入金日」の調整で資金ショートを防ぐ方法を見ていきます。※本連載は、戦略財務コンサルティング事務所・株式会社TCRの代表取締役で、財務全般のコンサルティング業務を全国で展開する武田健一氏の著書、『社長、その借金、なんとかできます!〜元銀行マンが教える「見切り」の事業再生』(合同フォレスト)より一部を抜粋し、傾いた事業を立て直すファーストステップとなる「資金ショート」完全防止対策について解説します。

「入金が先、支払いが後」なら資金ショートしない

資金ショート完全防止対策4つの柱のうちの3番目は、「〝入り〞が先で、〝出〞は後」です。これについて、まずものすごく単純化したお話をします。

 

1000円で仕入れたものを1200円で売る場合、それぞれが即現金決済である場合には、1000円の出金が先、1200円の入金が後です。

 

仮に、10月1日に仕入れ、10月15日に売り上げた場合、10月1日から15日までの間、収支はマイナスです。しかし、10月1日の仕入れを買掛にして、その支払日を10月16日にすれば、この取引における「収支マイナス期間」はゼロになります(以下の図表を参照)。

 

[図表]「〝入り〞が先で、〝出〞は後」

 

 

また、売上も掛け取引にした場合、売掛金の入金日を10月31日に、仕入れの買掛金の支払日を翌月11月5日にすればやはり、収支マイナス期間はゼロになります。このような取引をしている限り、手元の資金がゼロやマイナスになることはないので、「資金ショート」は起こり得ないということになります。

 

もちろん、事業は複数の取引先との間で、それぞれ締日、支払日、入金日の異なる取引が行われているので、このような単純な話にはなりません。

 

しかし、1カ月サイクルで見たときに、大口の入金がある日より前に、大口の出金があれば、収支マイナスか、あるいは動かせるお金の残高がわずかしかないという期間が必ずや発生してしまい、場合によっては、予定された日に大口の支払いができなくなるという事態になってしまいます。

 

逆に、大口の出金が予定されている日より前に大口の入金があれば、支払い不能になることも避けられるわけです。

 

ですから、いよいよ資金繰りが厳しくなってきたときには、取引先に、入金予定日を前倒しにしてもらう、あるいは、支払い予定日を後ろに延ばしてもらうよう、交渉してみることです。

 

もっとも、お互い個人事業者、自営業者という立場での取引であれば、こちらの窮状を納得いくように説明して理解してもらい、融通をきかせてもらうこともそれほど困難ではないかもしれません。もちろん、それまで取引先と築きあげてきた信頼関係のもとで、という前提にはなります。

大手企業では「支払日・入金日の変更」が信用問題に!?

一方、大手企業では、このような支払日、入金日の変更はかなりむずかしいといえます。

 

まず、大手企業の場合は、締日、支払日や、入金日は、どの取引先に対しても一律に決められていることがほとんどです。そして、そのような支払日や入金日を、窓口になっている営業等の担当者の一存で変更することはまず、できません。

 

担当者は上司に、取引先から支払日ないし入金日の変更についてのお願いがあったことや、その理由を、報告するなり報告書にして提出するなりして、その後、上司やトップの決済を受けることになるでしょう。それまでにはある程度の時間も必要ですし、そこでOKが出なければ、もはやあきらめるほかはありません。

 

また、大手企業であれば、多かれ少なかれ与信管理体制が敷かれていることでしょう。

 

そのようななかで、取引先からの支払日や入金日を変更してほしいという要望があれば、「あの会社は、資金繰りがうまくいっていないのではないか」「どうも経営状態が思わしくないようだ」などと判断され、その後の取引に支障が出る可能性もあります。

社長、その借金、なんとかできます! 〜元銀行マンが教える「見切り」の事業再生

社長、その借金、なんとかできます! 〜元銀行マンが教える「見切り」の事業再生

武田 健一

合同フォレスト

「マネーの虎」南原竜樹氏 推薦! 「借金2000万で首をつるな! マイホームも愛車も手放さなくていい! “地獄から脱出“するためのあの手この手がここにある。」 不渡り・倒産・破産は正しく理解・想定すれば怖くない! …

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