給与の遅延は最後の手段、原則NG
「〝入り〞が先で、〝出〞は後」ルールの他に、資金繰りが厳しいときにとる手段のひとつとして、「給与等人件費の締日(支払い確定日)から支払日までの期間を長目にとる」という方法が挙げられます。
給与など人件費は、残業代の多寡などによって多少の上下はあっても、おおむね毎月、ほぼ一定ということも多いものです。それゆえ、通常なら、あらかじめ必要額を確保しておきさえすれば、支払日に「お金が足りないから給与は払えません!」ということにはなりません。
しかし、資金繰りが厳しいうえ、給与の締日から支給日までの間に、臨時的に多額の出費があり、給与支給日にはお金が底をついていた―というような事態もあり得るのです。それなら、従業員の給与の支払いを待ってもらえばよいではないか――と考えたくもなりますが、これは絶対に避けるべきでしょう。
まず、労働基準法(第24条)では、「賃金支払いの5原則」を定めていますが、そのなかに、「毎月最低1回の支払いの原則」「一定期日払いの原則」があります。
違反したからといって、特に罰則があるわけではありませんが、コンプライアンスの点から、給与の遅延は「最後の手段」として考えるべきです。
また給与などの遅配があった場合、法律の決まりにより、遅れた日数分の利息にあたる「遅延損害金」(年利6パーセント)を上乗せして支払わなければなりません(商法第514条の「商事法定利率」の適用)。
さらに、法律的な問題以前に、従業員の「生活」があります。常日頃、会社のために身を粉にして働いている従業員の皆さんに対する「仁義」もあります。それゆえ、給与の遅配はタブーなのです。
「締日」から「支払日」まで約2週間のスパンをとる
ですので、資金繰りが厳しくなり、給与遅配の可能性が万にひとつも考えられるのであれば、締日から支払日までのスパンを長目にとることです。
給与については、通常は、15日締めの25日払い、20日締めの月末払いなど、締日から支払日まで10日くらいみるケースが多いと思います。
しかし、突発的な出費があったために残高が少なくなり、給与支給日に資金が足りなくなりそうだ│となったとき、その穴埋めに資金調達をしようと思っても、第2章でお話ししたとおり、実際に借入金を手にするまでには、最低でも2週間はかかります。
ですから、締日から支払日まで2週間のスパンをとり、15日締めなら月末払い、20日締めなら翌月5日払いに変更するといった対応をとるとよいでしょう。
なお、給与支給日を変更する場合には、従業員と十分に協議し、理解を得たうえで変更すること。従業員の同意を得られたら、給与についての規則を定めている就業規則や労働協約も変更・改訂し、原則的には労働基準監督署に届け出る必要があります。