今回は、支払いサイトを延ばして「資金繰り」を楽にする方法を説明します。※本連載は、戦略財務コンサルティング事務所・株式会社TCRの代表取締役で、財務全般のコンサルティング業務を全国で展開する武田健一氏の著書、『社長、その借金、なんとかできます!〜元銀行マンが教える「見切り」の事業再生』(合同フォレスト)より一部を抜粋し、傾いた事業を立て直すファーストステップとなる「資金ショート」完全防止対策について解説します。

給与の遅延は最後の手段、原則NG

「〝入り〞が先で、〝出〞は後」ルールの他に、資金繰りが厳しいときにとる手段のひとつとして、「給与等人件費の締日(支払い確定日)から支払日までの期間を長目にとる」という方法が挙げられます。

 

給与など人件費は、残業代の多寡などによって多少の上下はあっても、おおむね毎月、ほぼ一定ということも多いものです。それゆえ、通常なら、あらかじめ必要額を確保しておきさえすれば、支払日に「お金が足りないから給与は払えません!」ということにはなりません。

 

しかし、資金繰りが厳しいうえ、給与の締日から支給日までの間に、臨時的に多額の出費があり、給与支給日にはお金が底をついていた―というような事態もあり得るのです。それなら、従業員の給与の支払いを待ってもらえばよいではないか――と考えたくもなりますが、これは絶対に避けるべきでしょう。

 

まず、労働基準法(第24条)では、「賃金支払いの5原則」を定めていますが、そのなかに、「毎月最低1回の支払いの原則」「一定期日払いの原則」があります。

 

違反したからといって、特に罰則があるわけではありませんが、コンプライアンスの点から、給与の遅延は「最後の手段」として考えるべきです。

 

また給与などの遅配があった場合、法律の決まりにより、遅れた日数分の利息にあたる「遅延損害金」(年利6パーセント)を上乗せして支払わなければなりません(商法第514条の「商事法定利率」の適用)。

 

さらに、法律的な問題以前に、従業員の「生活」があります。常日頃、会社のために身を粉にして働いている従業員の皆さんに対する「仁義」もあります。それゆえ、給与の遅配はタブーなのです。

「締日」から「支払日」まで約2週間のスパンをとる

ですので、資金繰りが厳しくなり、給与遅配の可能性が万にひとつも考えられるのであれば、締日から支払日までのスパンを長目にとることです。

 

給与については、通常は、15日締めの25日払い、20日締めの月末払いなど、締日から支払日まで10日くらいみるケースが多いと思います。

 

しかし、突発的な出費があったために残高が少なくなり、給与支給日に資金が足りなくなりそうだ│となったとき、その穴埋めに資金調達をしようと思っても、第2章でお話ししたとおり、実際に借入金を手にするまでには、最低でも2週間はかかります。

 

ですから、締日から支払日まで2週間のスパンをとり、15日締めなら月末払い、20日締めなら翌月5日払いに変更するといった対応をとるとよいでしょう。

 

なお、給与支給日を変更する場合には、従業員と十分に協議し、理解を得たうえで変更すること。従業員の同意を得られたら、給与についての規則を定めている就業規則や労働協約も変更・改訂し、原則的には労働基準監督署に届け出る必要があります。

社長、その借金、なんとかできます! 〜元銀行マンが教える「見切り」の事業再生

社長、その借金、なんとかできます! 〜元銀行マンが教える「見切り」の事業再生

武田 健一

合同フォレスト

「マネーの虎」南原竜樹氏 推薦! 「借金2000万で首をつるな! マイホームも愛車も手放さなくていい! “地獄から脱出“するためのあの手この手がここにある。」 不渡り・倒産・破産は正しく理解・想定すれば怖くない! …

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