今回は、繰越残高のチェックポイントを見ていきます。※本連載は、戦略財務コンサルティング事務所・株式会社TCRの代表取締役で、財務全般のコンサルティング業務を全国で展開する武田健一氏の著書、『社長、その借金、なんとかできます!〜元銀行マンが教える「見切り」の事業再生』(合同フォレスト)より一部を抜粋し、傾いた事業を立て直すファーストステップとなる「資金ショート」完全防止対策について解説します。

毎月「一定以上の繰越残高」が維持できていれば安泰

前回の続きです。キャッシュフロー経営には、「キャッシュフロー計算書」(図表1)の作成が必須ですが、より正確な現状認識のために、まず「資金繰り表」(図表2)の作成から始めます。

 

[図表1]キャッシュフロー計算書(CF)サンプル

 

[図表2]資金繰り表 年次 サンプル

 

「キャッシュフロー経営」ではこのように、キャッシュフロー計算書、資金繰り表などを使って、実際のお金の流れをチェック・把握しながら経営を進めます。会社にいつ、どれくらいお金があるのか―それは、月次資金繰り表の、毎月の「次月繰越(繰越残高)」を見れば一目瞭然です。

 

そして当然のことですが、毎月々、入金が支出より多ければ、この繰越残高も月々増えていくのですが、月によって入金が遅れたり、臨時出費などで支出のほうが多くなったりすれば、前月の繰越残高よりも減ることになります。

 

年次の資金繰り表を見て、各月で上下することはあっても、毎月一定以上の繰越残高が維持できていれば、そこそこ安泰といえます。しかし、この繰越残高が毎月ギリギリしか残らない場合には、いわゆる「自転車操業」に陥っていることになります。

 

また、繰越残高が月々目減りしているようでは、「このままの状態で経営を続けていると、いつかは資金ショートする」可能性が高いということもわかります。

月商1カ月分程度の繰越残高がおおよその安全ライン

それではどれくらいが〝ギリギリの線〞なのか、言い換えれば、どの程度の繰越残高があれば、安全といえるのでしょうか。

 

業種や会社の規模にもよりますが、「月商の1カ月分くらいの繰越残高がある」ことが、だいたいの「安全ライン」といわれています。

 

もっとも、後にお話しするように、不渡りという事態を徹底的に防ぐために、手形決済をやめ、現金取引(掛け取引を含む)に徹する場合には、「月商の2カ月分くらいの繰越残高がある」と、まずまず安全・安心といえます。

 

もちろん、これで絶対安全というわけではありません。それこそ、世の中なにが起こるかわからないのです。

 

大口の取引先が突然倒産して売掛金が焦げ付き、来月以降の売上も減少するということになれば、月商1〜2カ月分くらいの現金があれば「当座は」なんとかなるとはいえ、なんの手も打たなければ、繰越残高は毎月、目減りしていくことになります。

 

しかし逆にいえば、このように、毎月繰越残高を確認し、また、日繰り表(以下の図表3を参照:日々のお金の収支を記帳する表)で出入金に不測の事態が起こったことを把握していれば、早期に手を打つこともできるのです。

 

[図表3]日繰り表 サンプル

 

この話は次回に続きます。

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