前回は、相続時精算課税制度の具体的な活用例などを説明しました。今回は、「売り上げは大きいが、経費も大きくて利益が少ない会社」が収益を改善する方法について、あるガソリンスタンドを例に見ていきましょう。

広い土地を生かして不動産賃貸業に業種転換する手も

今回は卸業者などの、売り上げは大きいが、経費も大きくて利益が少ないという会社を対象にした話を紹介します。

 

たとえば、ガソリンスタンド経営などはコストが高く、売り上げが20億円あっても仕入れ値が19億円するようなケースが珍しくありません。かつてはガソリンスタンド経営も羽振りがよかったものです。しかし、今日では内部留保だけはあるものの、今はそれを切り崩しながら経営を続けている状況で、そのうち行きづまることが目に見えているようなところも多いようです。これをどうすればいいかという問題です。

 

そういう時は、不動産賃貸業に業種をチェンジすることがよいのです。ガソリンスタンドであれば、それなりに土地は広いはずです。スタンドの敷地内というと、コンビニエンスストアやコーヒーショップなどが入っているケースも多いでしょう。ガソリンスタンドをテナントビルに替えて、ファミリーレストランでも携帯電話ショップでもいいですが、そういう店舗に貸したり、あるいは駐車場にしたり賃貸マンションにしたりというふうに、収益が見込めるものに組み替えます。

 

今のままガソリンスタンドを経営していても盛り返すチャンスがないのであれば、思いきって業種を変えるというのがビジネスのやり方です。

自社株評価が低いうちに株式は後継者に移転しておく

ただし、業種を変える前に、自社の株を後継者に移転しておくことをお勧めします。

 

20億円もの売り上げがある会社というのは、会社の種類でいうと大会社となります。株価評価は前回説明した「類似業種比準方式」で行います。ガソリンスタンドの類似業種の株価は、不動産賃貸業のそれよりもかなり低い値になっています。つまり、自社株を低く評価できるうちに後継者に移転してから、業種を変えるということです。

 

ここではガソリンスタンドを例に挙げましたが、不動産賃貸業をやれるほど広い土地を持っていて、売り上げの大半がコストで利益が薄い業種というと、たとえば、醸造会社があります。酒や味噌、醤油などは製造する大きな蔵があって敷地は広いことでしょう。しかし、手間暇かけてつくるわりには驚くほど利益が薄いはずです。

 

「自分のところもそうだ」と思いあたる節があったら、一考してみる価値はあると思います。事業承継をやるなら「今この時!」ということを覚えておいてください。

本連載は、2013年11月1日刊行の書籍『相続税対策は顧問税理士に頼むと必ず失敗する』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続税対策は 顧問税理士に頼むと必ず失敗する

相続税対策は 顧問税理士に頼むと必ず失敗する

田中 誠

幻冬舎メディアコンサルティング

税のプロとして認識されている税理士にも得意不得意分野があります。特に不動産を含む資産税に関する対策は、その実務経験がものをいいます。つまり、相続税対策はどの税理士に頼むかで、結果が大きく変わるのです。 本書は、…

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