中国と自由貿易協定(FTA)を結ぶことは、貿易の拡大面だけでなく、中国が推し進める世界規模のネットワークに参入する意味でも、スリランカにメリットがあると考えられます。また中国サイドから見ても、スリランカは地政学的な面で非常に重要な存在として捉えられています。

中国の戦略上重要となるスリランカの「地理」

貿易関係というものは、商業的な利益のみに左右されるわけではなく、そこには地政学が大きな役割を果たす。スリランカは中国が重要視する海のシルクロードの中でも、肝要な位置にあり、経済的なサポートだけでなく政治的な結びつきも強めようとしている。

 

スリランカの産業は中国のそれと競えるほどの力は持たない。そのため自由貿易協定をきっかけに、スリランカの市場が中国に支配されるのではないかと怯える産業もいくつかある。しかし、逆に言えばスリランカには強固な経済モデルを構築するための素晴らしいチャンスにもなると言える。中国と関わりを深めることで、経済や民間セクターの競争力が強化される機会にもなる。

政権交代でFTA協議は停滞しているが・・・

2014年におきたスリランカでの政権交代により、それまでの親中外交はバランス外交に移行した。その影響もありFTAの協議は現在進んでいない。しかし協議を再開させることは、50年以上も両国を結び付けてきた経済と政治の両側面にとって意味があることではないだろうか。

 

15世紀の鄭和の航海が、政治・宗教目的の他に、商業目的もあったことを振り返ってみても、中国にとってスリランカはアジア内貿易と国際貿易の中心なのだと分かるだろう。

 

鄭和に捕らえられたヴィラ・アラカイスワラ国王は最終的には釈放され、スリランカへと帰国した。しかし、外国での監禁による屈辱から立ち直って国王が復権する望みはなかったも同然だった。国王と同じく人質となった者達は、中国から送り込まれたシンハラ王国の王位継承者と共に、1414年にスリランカに帰国したのだが、帰国したその土地は以前より政治的に安定し穏やかになっていた。1415年にはパラクラマバーフ4世による55年の長期政権が始まり、中国の皇帝より庇護を受けていたものは失脚し、後にコーッテ王国と呼ばれる国が誕生したのである。

この連載は、GTACが提携するスリランカのメディア「ECHELON」が2015年10月に掲載した記事「Big Idea – Openness – Dealing With The Dragon」を、翻訳・編集したものです。

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