規模が「対等ではない」からこそ出てくるメリット
世界に対し中国が自己主張するその様子は、15世紀の頃ほど無愛想ではなく、スリランカの経済成長の機会も提示してくれている。政権交代がおきる前の2014年9月、スリランカは中国と自由貿易協定に向けた覚書を交わし、具体的な交渉段階へと進んだ。中国の150分の1ほどの経済規模しかないスリランカにとって、自由貿易の話は比較的好条件となるはずだ。
まず即効性のあるメリットとして、紅茶や衣料品を中心としたスリランカの輸出産業に新たな巨大市場がもたらされる点を挙げることができる。スリランカは中国に全紅茶輸出量のうちの1.5%を、また全衣料品輸出量のうちの0.5%(いずれも2200万ドル相当)を輸出している。そして、それらの輸出品は中国で15%から17%ほどの税率が課されている。
この2国は経済規模だけでなく、経済パートナーとしての互いの存在感の違いも顕著だ。スリランカにしてみれば中国は30億ドル分もの商品の輸入元である重要な経済パートナーである。一方で中国からしてみれば、全体で2兆ドルという年間輸出量のうち、0.15%しかスリランカに輸出していないことになる。
中国はスリランカ産の製品に市場を奪われる心配はしないだろう。一方で、スリランカの消費者たちもまた、中国からの輸入品を望んでいる。スリランカが抱く唯一の懸念点は、中国からの輸入品の利益が下がると、輸入による関税収入も落ちてしまうことだ。
パキスタンやニュージーランドの成功例を見習う
経済規模が小さい国でも中国と自由貿易協定を結んでいる、という事実は勇気づけられる。パキスタンとニュージーランドは、自由貿易協定締結から8年以内に、全輸出量における中国向けの割合を4倍にした。中国からの輸入の割合も増えたものの、輸出ほどではない。スリランカもこれらの国の成功を踏襲できるだろう。
経済規模が対等ではない2国間での自由貿易が成立するのは、小さな国が大きな国と争うことは選ばず、それを補う立場に回る傾向があるためだ。自由貿易協定で得られるだろう衣料品や紅茶の輸出という短期的な利益よりも、遥かに大きなチャンスが中国とのFTAにはある。そして、そんなチャンスの存在こそが、スリランカをFTAと駆り立てるものになるはずだ。
次回は、中国との自由貿易協定が開く世界的ネットワーク参入への道についてご説明します。