中国とのFTAにより、スリランカとしては紅茶や衣料品輸出量の増加が見込めるだけではなく、今後のより有益な二国間関係が生まれることが期待できます。さらに中国は広大な自由貿易圏をつくるという構想を持っており、スリランカもそこに参入できるチャンスがあります。

世界規模のサプライチェーンに参入するチャンス

中国とのFTAで、衣料品や紅茶の輸出量が増加するという即効的利益だけでなく、さらに大きなチャンスがある。まずその背景として、中国企業が人件費増加とスキル不足により価値連鎖(バリュー・チェーン)で優位な立場に立てていないという現状がある。中国企業はサプライチェーンの一部を地代が安いエリアや、技術力が高い労働力を抱える他国へと移転させている。そのためスリランカも中国との自由貿易協定を通じて、そのサプライチェーンの一部として自国の産業を活性化することが可能だ。

 

様々な国で生産された部品は中国に集められ、そこで最終的に完成品として組み立てられてから輸出される。電子機器・衣料品向けの生地・情報通信技術セクター等の主要なサプライチェーンのいくつかは、中国外のアジア地域に置かれている。二国間貿易協定によって各国の専門化が促進されており、スリランカもいずれは電子機器・ハイテク関連の産業を自国で築けるようになるかもしれない。

 

アジアの大半の地域にとって、もともと貿易障壁(関税)は比較的小さい。アジア各国がこれほどまでに二国間貿易協定に白熱するのは、この障壁を更に小さくできることを期待してではなく、協定締結によって世界規模のサプライチェーンに入り込むことを狙っているためだ。中国に今以上に衣料品や紅茶を輸出できることだけを期待し、自由貿易協定の交渉を進めるのは視野が狭いと言えるだろう。

中国も含めた大規模な自由貿易圏の構想とは?

さらにその先を見据えたメリットには、中国が2つの地域レベルの自由貿易協定を結ぶ動きが関わってくる。日米主導の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)は中国を蚊帳の外に置きながら急速に話が進んだが、次に構想されている東アジア地域包括的経済連携(RCEP)やアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)には中国も含まれている。特に後者はアメリカとロシア、そして東南アジアの勢いある経済圏のほとんどを含む協定となっている。

 

スリランカが属する唯一の貿易圏は南アジアを中心にしているが、残念なほどに域内貿易は活性化されていない。しかしもっと大規模な自由貿易圏が成立すれば、中国とのFTAのような二国間協定を通じて、スリランカも恩恵にあやかることができるだろう。また政策立案者は、中国が含まれないTPPへの加盟交渉をするためにも、この機会に事例を作りたいと主張している。ダイナミックな二国間・多国間協定の一員になることが、スリランカの変化のきっかけとなるはずだ。


次回は中国との関係強化によって、スリランカが観光立国・投資先として成長する可能性についてご説明します。

この連載は、GTACが提携するスリランカのメディア「ECHELON」が2015年10月に掲載した記事「Big Idea – Openness – Dealing With The Dragon」を、翻訳・編集したものです。

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