明王朝の鄭和もかつて訪れた歴史的な二国間関係
14世紀のシンハラ王国は防衛策として西海岸へ遷都したが、それはたいした解決にはならず、領土拡大を図る北部のタミル王国と断続的に交戦状態に入った。タミル王国は当時スリランカの主力輸出品であったシナモンを狙っていた。
しかしながら15世紀初期に入る頃には、地政学は大きな転換を向かえ、シンハラ王国は天敵のタミル王国からではなく、遠方にいる中国からの勢力に怯えることになる。明王朝初期の中国は、皇帝への貢納や忠誠心を要求するべく大量のジャンク(木造帆船)をインド洋の港へと送り出していた。
中国の武将である鄭和は、1スリランカ中央部のキャンディにある佛歯寺に納められた佛歯を貢ぎ物として持ち帰るため、1405年に第1次航海へと出向いた。その任務は失敗に終わったため鄭和は憂き目に会うことになるが、5年後の航海ではシンハラ王国のヴィラ・アラカイスワラ国王とその妃、そして何人かの貴族を捕虜として連れ帰った。
15世紀に見られたように中国が勢力を増すと、周辺国やその国民は中国の存在に脅かされ、時にはそれ以上の事態に巻き込まれる。現代の中国はあからさまに貢ぎ物や忠誠心を要求することはないが、中国は莫大な人口を支えるために自国の経済を最優先にして行動をしている。しかし、それでも中国とFTAを進めていくことには、スリランカに大きなメリットがある。
インフラ整備のため400億ドルの基金設立を表明
中国が400億ドルの基金を積み立てて、中国とアジア・アフリカの港や原料のサプライチェーンを結ぶ「21世紀の海のシルクロード」を整備する構想を発表したのは2013年のことである。東西航路の中間に位置し、中国が所有するコンテナ・ターミナルがあるコロンボのハブ港にも近いスリランカのハンバントタ港は、その海のシルクロードの重要な拠点となる。
アフリカ・中東・西欧から原料や商品を中国に運び出す海のシルクロード上に、スリランカは位置しているのだ。また、世界の工場としての中国から見れば、このルートは自国製品を世界に輸出するための通り道となる。
次回から、中国とのFTAがもたらすスリランカのメリットについてご紹介していきます。