前回は、ハワイの固定資産税率の改定について取り上げました。今回は、ハワイ不動産購入における「公証手続」について解説します。

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売主/買主が「本人である」ことを証明する手続

ハワイ州を有するアメリカ合衆国は不動産において超先進国です。

 

本連載でこれまでお伝えしてきたように、アメリカではエスクロー制度が確立され、MLS(Multiple Listing Service)が存在するため、売主と買主の双方にとって透明でフェアな取引が可能な土壌が既にできあがっています。

 

また、売買契約書締結から不動産の所有権移転登記までの各種書類上のお手続きに関しても、「電子署名」を利用することが一般的になり、e-mailで送られてきた書類をPCやスマートフォンで確認し、クリックやタップをしていくだけでご自身が署名したのと全く同じ法的効果を得られるようになりました。

 

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海外不動産を売買するにあたり、実質的な距離の問題や現地との時差の問題など、今までは心理的なハードルだけでは無く、物理的なハードルも高かったのですが、ここ10年で進化した様々なテクノロジーの恩恵を受け、その物理的な面に関してはかなりハードルが下がりました。

 

ただし、不動産の超先進国であるアメリカでも、やはり不動産という資産の特性上、全てをデジタル化するところまではまだ追いついておりません。今回は、アメリカ不動産売買時に必要な手続きで、唯一デジタル化できていない「公証」の手続についてご説明します。


公証手続とは何かというと、当該不動産を売買するにあたり、売主/買主がそれぞれ「本人である」ことを証明するための手続きになります。日本の不動産売買時には、住民票や印鑑証明書、法人であれば謄本など、いわゆる公的書類というものが存在し、手続において提出が求められるかと思いますが、アメリカにはそれに該当するような公的書類が存在しません。

 

本連載第12回から第18回まで、7回に渡って連載させていただいた「ハワイ不動産の売買契約書の見方」でご説明したような諸手続に関しては、「電子署名」によりオンライン上でプロセスを進めていくことが可能ですが、その手続を進めてきたのが本当に当該不動産の所有者であり、また購入者である、ということを公的に証明する必要があります。

 

売買契約手続の最終段階として、「Deed」(譲渡証)という書類をエスクローが弁護士を通して作成します。この「Deed」が「Bureau of Conveyance」という登記所で登記されることになり、非常に重要な書類となるのですが、この書類へ署名をしたのが本人であることの証明を取り付ける必要があります。

現地に行かなくても、大使館や公証役場での手続が可能

ではどのようにこの認証を受けることができるのかというと、現状は方法が3つあります。

 

1.在日米国大使館・領事館での手続


●東京・札幌・大阪/神戸・福岡・那覇の各地の大使館・領事館にて認証手続が可能


●認証文書1通あたり50ドル(相当額の日本円もしくはクレジットカード払い可)


●完全事前予約制(オンライン上での予約が必要)


●館内入館には厳しいセキュリティチェックがあり、電子機器の持ち込み制限あり
 ※東京の大使館ではPCの持ち込みは不可。携帯電話は可。

 

●必要書類:パスポート原本・公証費用・認証書類等

 

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2.東京都・神奈川県・大阪府における公証役場での手続


●上記3都府県においてはいわゆる日本の公証役場での外国文書への認証手続が可能
 ※「外国公文書の認証を不要とする条約(略称:認証不要条約)」(1961年10月5日のハーグ条約)に基づく付箋(=アポスティーユ)による外務省の証明を添付することにより、アメリカでの認証書類と同様の法的効果を持つ。


●認証文書1通あたり11,500円
 ※上記は譲渡証への認証費用となり、他文書はそれぞれ料金設定が異なる。


●予約制では無いが事前確認が必要


●必要書類:本人確認書類(運転免許証・パスポート・その他)・公証費用・認証書類等
 ※日本の公証役場では住所確認も必要になるため、住所確認可能な本人確認書類が必要。

 

3.ハワイ現地での公証手続


●売買手続期間最終段階においてハワイ渡航が可能な場合、ハワイ現地のエスクローや銀行にて認証手続が可能


●エスクローで認証手続を行う場合は費用負担なし


●必要書類:パスポート原本


というように、不動産の売買取引を完結させるためには、現状は上記の3つの方法の内いずれかの方法で「公証」手続を行うことが求められます。裏を返すと、ハワイ不動産の売買手続を進めるにあたり、売買契約書の内容が合意できれば、日本国内にいて全プロセスを完結させることが可能ということです。

この売買プロセスの仕組みが法的にしっかりと体系化されているアメリカだからこそ、世界各国からの投資が活発になり、どこにいても安心して取引を進めることができる環境が担保されているわけです。

 

※本掲載内容は2017年9月時点での情報となります。大使館や公証役場での手続に関して変更が生じる可能性もあるため、予めご了承ください。

 

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