「ローンによる分割返済」は借り手の権利
本来、一括で支払うべき借金を複数回に分けて支払うのがローンです。ローン契約では一定期間内に一定のペースで返済することが認められており、法律用語では借り手に与えられたこの権利を「期限の利益」と呼びます。
たとえば3000万円を返済期間35年のローンで借り受ける場合、借り手は35年という「期限の利益」を得ます。その代償として金融機関には金利を支払うことになっており、前記ローンの利率が1.0%なら、金融機関が得る利息の総額は556万7998円という大きな額になります。
これがローン契約ですが、契約が維持される前提として、「最後まできちんと返済を続けてくれるはず」という信頼が欠かせません。したがって民法には信頼が損なわれたことを理由にこの「期限の利益」が失われるケースが規定されています。
破産、担保滅失・・・「期限の利益」が失われるケース
『民法(第137条)上の期限の利益喪失事由』
(1)債務者が破産手続開始の決定を受けたとき
(2)債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき
(3)債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき
さらにローンの提供を受ける際に金融機関と交わす「金銭消費貸借契約書」には、契約条項として次のような「期限の利益喪失事由」が定められています。
「金銭消費貸借契約の期限の利益喪失事由」
(1)債務者が倒産手続(破産手続、民事再生手続、会社更生手続、特別清算手続)に入った事実
(2)債務者の信用不安を窺わせる事実(支払停止・支払不能に陥ったとき・手形交換所から不渡処分または取引停止処分を受けたとき・第三者から差押え・仮差押え・仮処分を受けたとき等)
(3)当該契約その他の当事者間で締結される契約に違反した事実
(4)その他(所在不明、解散等)
ローンの滞納は(2)に該当するため、「期限の利益」を喪失する理由になり、「期限の利益喪失の通知」が送られてくるのです。
「期限の利益」を失ってしまうと、ローンの借り手は負債を一括返済しなければなりません。一括返済ができなければ、次の段階として「代位弁済」へと進んでしまいます。