区分所有は「規模」が小さすぎて効率が悪い!?
Q:一棟ものと区分所有、どっちが有利?
収益物件といっても、アパート・マンションを一棟購入するのと区分所有の物件を購入するのとでは、資金計画も賃貸経営の考え方も大きく異なります。どちらも一長一短あるように思うのですが、最終的に資産形成に有利なのはどちらでしょうか?
A:資産形成には、一棟もののほうが有利
一棟ものと区分所有、どちらが優れているとは一概にはいえませんが、不動産による資産形成という観点からは、圧倒的に一棟もののほうが優れているといえます。理由は簡単で、ある程度の資産規模を目指す人の投資対象としては、区分所有ではロット(規模)が小さすぎるからです。
区分所有の物件を検討する場合、比較的利回りの高いワンルームが候補になります。価格は最近値上がり傾向にあるとはいえ、安いものでは数百万円程度、高くても2000万~3000万円です。資産規模を拡大するにあたり、区分所有を何十戸、何百戸と購入する方法もなくはないですが、手間を考えると効率的とはいえません。
ロットが小さいことの他にも区分所有が資産形成に向かない点はあります。ほとんどがRC造で減価償却期間が長く、効率的な節税がしにくいこと(減価償却については書籍『利益と節税効果を最大化するための収益物件活用Q&A50』第4章で詳しく説明しています)。都心部に多いため利回りが極端に低いこと。修繕積立金や管理費、固定資産税などのコストが高いこと。オーナーさんの権限が及ぶのは自己所有の室内のみで、建物全体の経営判断(大規模修繕、設備の更新、清掃など)は他者(理事会や管理会社)に依存しなければならないこと……などです。
区分所有は、不動産賃貸事業というよりも「金融商品」に近い性格を持ちます。経営的な側面が少なく、気軽な投資をしたい人に適しているといえるでしょう。収益物件活用によって資産を築きたいのであれば、一棟もので、かつ投資効率の良い中古のアパート・マンションにターゲットを絞るべきです。
マンション内の部屋を複数戸取得する「バルク買い」
基本的に区分所有は資産形成には向かないのは先述の通りです。しかし、一度の取引でまとまった戸数を取得できるのであれば、面白みがあります。
分譲(区分所有)マンション内の部屋を複数戸まとめて取得する「バルク買い」という買い方があります。ごく稀にですが、地権者が等価交換(注)によって手に入れた物件や、バブル時代の売れ残りをデベロッパーがまとめて所有していて、相続や資産整理などの事情でまとめて手放すケースがあるのです。賃貸に出した場合の利回りが合えば非常に投資効率が良く、そして選択肢が広い魅力的な投資対象となります。
注:等価交換による取得とは、土地権利者が所有・借地する土地の上に、デベロッパーが建設資金を負担して建物を建設し、住戸等を土地権利者とデベロッパーそれぞれの出資割合に応じて取得すること。
なぜなら、先述のデメリットであるロット(規模)が一度の取引で確保できるからです。また一定割合の戸数を取得することでマンションの経営権を確保することもできます。割合にもよりますが、半分以上を確保できるようであれば大規模修繕の時期等の物件全体の大方の運営方針を自分で決められるでしょう。ある意味、一棟ものを所有するのと似たような状態になるということです。
分譲仕様の物件は、賃貸仕様の物件とは建物の造りが根本的に違うので、同じ家賃水準であればマーケットにおいて優位性があります。今まで私が扱った物件でも、分譲仕様の賃貸物件は人気があり、高い稼働率を保っています。
将来的な出口戦略を考えた場合も、一部屋単位で居住用の物件として売却できるため有利です。もちろん、残債がある場合は金融機関の融資条件にもよりますが、これは一棟ものの中古アパートにはない選択肢です。つまり貸してよし、売ってよしの物件で、その時々の経済状況に合わせた細かい対応ができるのです。
なお、区分所有の物件を購入する場合、選ぶポイントとして最重要なのは、建物管理(および管理会社)の状況です。「分譲マンションは管理を買え」といわれるように、建物全体の管理の良し悪しが物件の価値を大きく左右します。大規模修繕の実施状況、管理組合に修繕積立金が必要額ストックされているかどうかも必ず確認してください。これらを記載した「重要事項に関わる調査報告書」は管理会社から取得できます。