物件取得から売却までの利益を最大化するには?
収益物件の活用は、物件の取得から管理運営、そして売却(出口戦略)までの一連の活動です。この活動を通じて得られる利益を最大化することが、先に述べた4つの効果を得るための大前提になります。
収益物件活用の利益は、次の式のように表すことができます。
利益=(売却金額-取得金額)+(保有期間中の収入-保有期間中の支出)
まず利益の一部となるのは物件の取得価格と売却価格の差額です。これは株式の売買と似ています。安く買って高く売れば当然利益が出ますが、逆であれば損失になります。次に保有している期間の損益です。保有期間中に入ってきたお金(主に賃料収入)と出ていったお金(経費等)をトータルで差引した結果が利益であるということです。
物件の売買、賃料収入、運営中の経費、そして税金、すべてを考え合わせて手元に残るキャッシュをいかに多くするのか。それが収益物件活用において決して欠いてはならない視点だといえます。
収益物件の価格=「建物価格+土地の価格」の合計
収益物件活用における損益の考え方をグラフ化したのが図表の「損益判定グラフ」です。グラフを参照しながら、利益を出す仕組みについて解説していきます。
[図表]損益判定グラフ
まずグラフの縦軸が物件の価格(原価)、横軸が物件取得からの経過年数です。グラフは、物件価格1億円で購入した場合を想定しています。年数が経過するにしたがって右下に下がっていく線は「投資回収線」であり、原価が下がっていっていることを示しているものです。原価が下がるのは、時間が経過するとともに純収入(賃料収入から管理費、修繕費、固定資産税、法人税・所得税などを引いた収入)を得ているからです。グラフでは、取得から7年経過時点で2000万円の純収入を得ており、原価は1億円−2000万円で8000万円に下がっています。最終的には1億円の純収入を得られた時点で、投資した1億円をすべて回収したことになります。投資回収後に得る純収入は、すべて利益です。
次に見るべきポイントは、取得した物件の市場価格がどのように変化していくかということです。グラフの線A、B、Cは物件の市場価格の推移を3パターンで示しています。市場価格はその時点での売却額と同義です。
一般的に収益物件は年数が経過すると賃料が下がり、それに伴って物件の市場価格が下がっていきますが、最も早く下落しているパターンがCです。Cを見ると、前述した投資回収線の下落よりもスピードが速いことが分かります。つまり、得られている純収入の額を、物件価格の下落の額が上回っているということです。7年経過の時点で物件価格が6000万円にまで下がっていたとしましょう。1億円の投資から2000万円しか回収していないのに、売却してしまうと6000万円にしかなりませんから、手元に残るのは合計しても8000万円です。投資額は1億円ですから、残りの2000万円は損失ということになります。実際には物件を売らないとしても、いわゆる含み損を抱えている状態です。
一方、Bの線は、Cよりも下落が緩やかで投資回収線を下回ることがありません。7年経過時で市場価格が8500万円だとすれば、先ほどとは逆の考え方で、500万円の利益が出ていることになります。Cとは逆で売却しなくてもいわゆる含み益を得ている状態です。
線BもCも、あるタイミングで下落が止まっていますが、これは物件の市場価格が必ず下げ止まることを意味しています。下げ止まるのは、土地の値段そのものになったときです。詳細はQ&Aで解説しますが、収益物件の価格は「建物価格+土地の価格」の合計です。物件の価格は賃料の下落に伴って下がっていくのが普通ですが、土地の値段はゼロにはなりません。このように物件価格=土地の価格となった物件を「土地値物件」といいます。いっさい下落していない線Aのパターンです。Aの場合は7年経過時点でも1億円で売却できるので、仮に売却すれば2000万円の利益が出ます。投資回収が進むごとに利益は増えていき、全額投資回収した時点で売却すれば、その投資を通して1億円の利益が得られるということです。