資産家の特権ではなくなった「賃貸併用住宅」の所有
前回の続きです。
この賃貸併用住宅という住居形態を取ることは今の時代、不動産を所有する資産家や地主という一部の人たちの特権ではなくなってきました。マイホームを持とうとする誰もが、こうした住居形態を取るチャンスを得ることができるようになってきたのです。
それを可能にしているのが、近年の低金利下での金融機関の融資姿勢です。日銀が2016年2月、マイナス金利政策を導入したため、金融機関としては手元のお金を融資に振り向けないと、収益が損なわれかねないことになりました。そのため、それまでも積極的だった融資姿勢はさらに前向きになったという経緯があります。
そのお金が向かった先の一つが、賃貸住宅の建設です。相続対策の必要性や不動産投資ニーズが高まり、賃貸住宅の建設ニーズは高まっていました。そこに金融機関の融資に対する積極さが重なり、実際、賃貸住宅の建設は増加しています。
国土交通省「建築着工統計調査報告」で住宅着工戸数を見ると、2016年の着工戸数は全体で96万7237戸。前年比6.4%増でした。この伸びを支えたのが、賃貸住宅です。利用関係別にみると、賃貸住宅にあたる「貸家」は着工戸数41万8543戸で、前年比10.5%増。「持家」や「分譲住宅」も着工戸数は前年に比べ伸びてはいますが、その伸び率はいずれも3%台にすぎません。
賃貸住宅の建設は現在、活況を迎えています。こうした時流の中で、マイホームとして賃貸併用住宅を購入するという考え方にも関心が集まっているのです。
ただ住むだけの住宅を、お金を生み出す「資産」に
「働楽(はたらく)マイホーム」がただ住むだけの住宅とどう違うのか、最後に強調しておきたい点があります。それは、賃貸併用住宅は「資産」、ただ住むだけの住宅は「負債」という点です。
この見方を教えてくれたのは、ロバート・キヨサキ氏とシャロン・レクター氏の共著『金持ち父さん貧乏父さん』(筑摩書房)という翻訳本です。2000年11月に出版され、翌2001年には、出版流通大手のトーハン調べで年間ベストセラーのトップ(単行本・ビジネス)に躍り出た名著です。
そこでは、「金持ち父さん」と「貧乏父さん」のお金に対する考え方や行動の違いを比べながら、どうすれば富を築けるか、著者のお金に関する哲学が述べられており「資産」と「負債」の違いを肝に銘じることの重要性が指摘されています。「資産」とはお金を生み出すものであるのに対し、「負債」とはお金を失わせるものだからです。自らのお金は「資産」に向かわせないと、富を築くことはできません。したがって、「負債」をつくるのではなく、「資産」を買うことを考えるべき、という教えです。