「相続対策」にも有効な賃貸併用住宅
何らかの財産を子どもや家族に残したいというのは、親や世帯主ともなれば、ごく自然な気持ちです。
何しろ将来への不安の強い時代です。リタイヤ後の高齢者はもちろん、現役の若年層にしても、ゆとりある生活を送るのは決して容易ではありません。親の残した財産がどの程度のものなのかという点は、非常に大きな関心事のはずです。
その残された財産が「働楽(はたらく)マイホーム」であるとすれば、どうでしょう。ただ住むだけのマイホームではありません。毎月安定したキャッシュフローを生み出してくれるマイホームです。仮に自己居住用の住戸に住まなくとも、そこを賃貸用に振り向ければいいだけの話ですので財産を譲り受ける側としても、それからの生活を組み立てる上でとても重宝するに違いありません。
ただ、財産を譲り受けるというのは、それを相続するということにもなりますので、ここで相続税について簡単に説明しておきましょう。
相続税の対象となる財産には、預貯金や不動産などが考えられます。預貯金の場合、評価額ははっきりしています。1000万円の預貯金であれば、評価額は1000万円です。ところが不動産は、仮に1億円で購入したからといって、評価額も1億円ということにはなりません。
不動産の評価には、国や公共団体の評価額が用いられます。土地に関しては国で定める路線価という評価額をもとに、建物に関しては公共団体で定める固定資産税評価額をもとに算出する仕組みです。それは、通常の戸建て住宅も賃貸併用住宅も共通です。
であれば、普通の戸建て住宅より規模が大きく、価格も高い賃貸併用住宅の方が、当然評価額は高くなり、相続を受けた子どもや家族に相続税の納税義務が課される可能性が懸念されますが、賃貸併用住宅は、二つの面から相続対策という役割も発揮することができるのです。つまり、不動産の評価額を一定程度まで抑えることが可能になるのです。
住宅ローンが残っていれば「評価額の圧縮」が可能に
一つは、住宅ローンの存在です。相続財産には借り入れ金も含まれますから、賃貸併用住宅の購入に利用した多額の住宅ローンがまだ残っていれば、相続人である子どもや家族はそれも譲り受けます。これは言わば、マイナスの財産です。相続財産の評価額が例えば預貯金と不動産で1億円になっても、住宅ローンが4000万円残っていれば、相続財産の評価額は1億円-4000万円=6000万円と計算されます。賃貸併用住宅の場合、住宅ローンの借り入れ額が大きいだけに、相続財産の評価額をある程度圧縮する可能性が見込めます。
もう一つは、賃貸住宅にはその評価額を圧縮できる制度が用意されているという点です。土地にしても建物にしても、第三者に賃貸しているということは、その所有者の権利が制限されているということです。裏を返せば、土地を借りている借地人は借地権を、建物を借りている借家人は借家権を持っているため、賃貸している土地・建物の評価額を算出する場合には、それらの所有者の権利が制限されたままで相続することになります。つまり、借地権や借家権に相当する割合を評価額から差し引く仕組みになるのです。このほかにも、自己居住用や賃貸用の住宅の敷地に関しては一定程度の広さまで評価額を減額する仕組みがあるため、それらの適用を受けられれば、賃貸併用住宅の評価額は一定程度まで圧縮できると考えられます。
税金については案件により細かな判断が必要となりますが、不動産の評価額が一定程度まで抑えられれば、相続税の納税義務は発生しなくなることもあります。賃貸併用住宅は子どもや家族に財産としても安心して残すことができるのです。