将来の家族構成を予想するのは難しい
生活面でのメリットとしてもう一つ強調しておきたいのは、家族構成の変化に対応しやすいという点です。
家族構成というのは、ライフステージによって変化します。結婚し、子どもが生まれ、さらに第二子も誕生すれば、大人二人から、大人二人と乳児一人、さらに大人二人と乳幼児二人、というように、まず乳幼児の数が増えていきます。
子どもがさらに成長し20歳を超えれば、大人二人と子ども二人の家族から、大人四人の家族に変わるとも言えます。子どもが独立するようになると、家族構成はまた変化します。
大人四人から大人三人に、そして大人二人に、というように、スタート時点の姿に戻ります。
なかには、ここで終わらない家族もいます。親の呼び寄せです。離れて暮らす両親の片方が残されたとき、高齢者の一人暮らしが心配だからと、子が自宅または自宅の近くに呼び寄せるわけです。家族はこのように、時代とともにその構成を変えていきます。
マイホームの購入では、これが案外、厄介な問題です。家族構成がどう変化するかは読み切れませんから、最初から対処するには限界があるからです。
購入する時点では恐らく、家族は夫婦二人か、子どもがいたとしても乳幼児一人だけという構成でしょう。その時点の家族構成にマイホームを合わせても、将来、不具合が生じることになります。あらかじめ少し広めの子ども部屋を確保し、将来は二つに区切れるようにしておくというのは、よくある一つの対処方法です。
子どもが成長していく過程ではいいとしても、逆に独立して巣立っていくようになると、空き部屋が生まれてしまいます。荷物の一部は残していくこともあるので、空き部屋というよりは実際は納戸のような存在でしょう。
しかし子供たちが家庭を持つようになれば、さすがにその荷物も引き取るなり処分するなりして、いよいよ本格的な空き部屋に移行します。広々した家に高齢の夫婦二人で暮らすようになり、マイホームを持て余すようになる時期です。
そんな時に、遠方から実家の親を引き取ることになったらどうでしょう。マイホームは当然、二世帯住宅の造りではありませんから、親を引き取るなら完全同居のスタイルになります。
それまで同居していた時期があればまだしも、そうでないとすると、日常生活に変化が生じます。呼び寄せるのが夫の母親であれば、高齢の嫁と姑の同居がいきなり始まることになります。
仮に呼び寄せないとしても、それならば遠方で一人で暮らす母親を誰が見守るのか、夫としては悩ましい問題が残ります。
成人した子ども、年老いた親との近居にも最適
こうした家族の悩み事に、賃貸併用住宅はうまく対処してくれます。
例えば子どもの独立。娘さんの場合、自立心は付けさせたいが、一人暮らしをさせるのは親として心配ということもあるかと思います。身の安全を守るには親元に置いておきたいと考えるのは、親心でしょう。
しかし、その娘さん当人が、一人暮らしを強く望んでいたとしても、マイホームが賃貸併用住宅ならばうまくタイミングさえ合えば、空き住戸に住まわせることも可能です。広い意味では親元でありながら一人暮らし、という居住スタイルになるので親にとっても子にとっても良い解決策ではないでしょうか。
そしてもちろん、親の呼び寄せにも対処可能です。自己居住用の住戸と賃貸用の住戸は独立した造りなので、玄関から水回りまで全てを切り分けた完全分離型の二世帯住宅と同じような形で同居することができます。
最近よく使われる言葉で言えば、近所に住まわせる「近居」というスタイルに近いかもしれません。こういうスタイルであれば、親の様子を日常的に見守れる一方で、互いの生活に干渉することがなく親の側も子の側も安心して日々を送ることができます。
場合によって、賃貸用の住戸スペースがご自身の仕事に役立つという場面も出てくるかもしれません。国を挙げて働き方改革が進む中、テレワークと呼ばれる会社のオフィスに縛られない働き方が広まっています。働く場所は人によっていろいろ。そうした需要を狙った専用のレンタルスペースもあれば、町中のカフェもあるでしょう。
もちろん、自宅もその一つです。自宅で仕事をする機会が増えていくことを見越して、最近は仕事用のスペースを自宅内に確保する動きも見られます。自宅のすぐ近くにある賃貸用の住戸は、そうしたスペースの一つとしても活用することができそうです。
独立した複数の住戸を自己居住用の住戸に併設する形で持つ――そうした賃貸併用住宅ならではの造りが、家族構成や住まい方の変化に柔軟に対応できるというマイホームとしての可変性を、格段に高めているのです。