「賃貸併用住宅」は比較的古くから存在する形態
さてここまで賃貸併用住宅のメリットを説明してきました。住宅としては新しいスタイルのようにも受け止められたかもしれませんが、決してそうではありません。新しくも、珍しくもないものです。とりわけ都市部では比較的古くから存在してきた住宅の形態と言えます。
例えば都市部のビル街には、最上階に個人オーナーが居住する中層ビルが数多くみられます。オーナー住戸の下は、立地によってオフィスの場合も住宅の場合もあります。住宅の場合には、まさに賃貸併用住宅です。
成り立ちから言えば、土地を持つ地主がそこを有効活用するときに賃貸併用住宅を選択するというのが始まりです。土地の有効活用の一手段だったわけです。
賃貸用住戸を併設すれば、余剰の敷地も売却せずにすむ
例えば親から相続した土地・建物に住んでいるケースです。建物が老朽化してきたことから、それを建て替えることを決めたとしましょう。
敷地に余裕がある場合、そこは切り離して第三者に売却し、残る自己居住用の建物部分だけでこじんまり建て替えるのが一つの道ですが、その場合、土地の一部を第三者に売却することによって生じる譲渡益に譲渡課税という税が課されます。これが、もったいないとも考えられます。
譲渡課税とは、その土地をもともと取得した時の価格と第三者に売却した時の価格との差額に課されるものです。親から相続したような代々の資産であれば、長期間にわたって所有していたものですから、それを取得した時の価格は、今の時代に売却する時の価格に比べ相当安いはずです。
つまり、課税のもとになる差額はそれなりの額と考えられます。税率は決して高くはありませんが、一方の差額が大きければ、課税額も大きくなる可能性は十分あります。
この課税分をもったいないと考えたら、どうすればいいのでしょうか。ここで再び、賃貸併用住宅の出番です。建て替えにあたり、自己居住用の建物部分だけを建設するのではなく、賃貸用の住戸も併設するのです。
そうすることによって、敷地を目いっぱい使い切ることもできます。敷地の余剰分を売却するのではなく、所有したまま全体の有効活用を図るという考え方です。
これは、相続対策としても有効です。だからこそ、不動産をたくさん所有する資産家の間で広まったと言えます。具体的にどのようなことなのかは、先ほど賃貸併用住宅のメリットをご紹介する中で説明した通りです。
ポイントは、次の二点です。
①借り入れを起こしてマイナスの財産をつくり出す。
②相続する不動産が賃貸用として評価されることで評価額が圧縮される。
相続対策として役に立つこの二点が、賃貸併用住宅の建設という行為の中に埋め込まれているのです。