高値更新相場を支えてきたトランプの積極財政への期待
昨年11月の米国大統領選でトランプ氏の当選が決まって以降、トランプ政権下でインフラ投資や大規模な減税など積極財政政策案が示され、緩やかな成長を続けてきた米国経済の成長率を一段押し上げるのではないかとの期待と、米国企業の順調な業績拡大に支えられ、米国株の強気相場は拡大。ついに先月、8月2日にはダウ工業株30種の終値ベースで史上初めて2万2000ドルを突破した。
ちなみに、この水準は筆者が年初来、上値めどの値として申し上げてきたところであり、それ自体に驚きは感じていない。S&P500種指数構成企業の第2・四半期の増益率は約6年ぶりに2期連続の2桁増益になる見通しであり、企業業績の伸びが今年の米国株式相場のじり高、高値更新相場を支えてきた。
S&P500予想PERは長期平均を上回り米国株は割高水準
一方で、市場はこのところ8月2日の高値を更新することが出来ずにいる。相場のデータで見ると、上昇銘柄と下落銘柄の比率は芳しくない。また、高値更新中の株高をけん引する月別の上昇銘柄の数は減少に転じている。
こうした上昇銘柄の広がりが欠けていること、年初来じりじりと高値更新を続けてきたにも関わらず取引高は一向に増えていないことなどが、株価に上値追いの余地があるのではないかという、市場参加者の疑念を示しているのではないだろうか。
実際、S&P500種指数の12カ月先予想で株価収益率(PER)は約18倍に達し、2004年以降で最も高い水準にある。また、PERの長期平均である15倍と比べても上回っている。米国株は、既に割高な水準にあるといわざるを得ない。
昨年11月、弾みのついた上昇相場の起点となった、トランプ氏が掲げたインフラ投資や減税などの政策は、未だ何一つ実現していないのである。ここからの上値追いには、やはり、上述の期待が現実になる必要があると筆者は見ている。
この点では、秋の議会審議からは目が離せない。前稿で書いた欧州中央銀行の金融政策変更の議論と並んで、相場のターニングポイントとなる材料であろう。