利益を犠牲にしたのに、遊技客は「出ていない」と…
ジリ貧状態に陥っているホールほど、利益が取れていないのに出そうとする傾向があります。間違った判断をするからこそジリ貧になると言えるのですが、背景にあるのはパチンコホールが抱く大きな誤解と不安感です。
「出さないとすぐに遊技客は感じ取り、『あのホールは出ない』という評判が広まってしまうぞ!」
B店もこのように考えていましたが、一概にそうとも言えません。「出している」から遊技客が来るのではなく、遊技客は「出そうに感じる」からやって来るのです。この認識がしっかりできていないB店では「出しているつもりなのに遊技客が来ない→もっと出す→利益がまったく取れない」という負の流れが常態化しつつありました。
稼働が落ちると「利益が薄くなるのは目をつぶって、とにかく出して対応するしかない」と考えていたのです。
ところがここで問題が起きました。利益を犠牲に出しても稼働が戻らなかったのです。しかも、遊技客の声を聞くと「出ていない」と言います。ホールの認識と遊技客の感じ方が逆だったため、利益が取れず稼働も戻らないという悲劇が起きてしまいました。
出すのではなく、出しているように「見せる」
解決策:「出玉感」を重視する戦術で利益を抑えずに稼働を上げる
出す営業を続けていたB店が遊技客から「出ないホール」と認識されてしまったのは、遊技客の感じる「出玉感」に対する理解が足りなかったからです。
「出している・出していない」というホール側の感覚は利益率や割数という一点が根拠であり、B店では遊技客の側も同じだと考えていました。ところが遊技客の感じる「出玉感」は複数の要素が複雑に影響して形作られるものです。利益率だけを根拠に判断しているわけではないため、ホールの感覚とはズレがあるのです。
たとえば「よく回る遊技機」と「回らない遊技機」の違いはS値(1分間あたりの回転数)で示せると考えられています。B店でもS値だけに注目していましたが、それでは遊技客の感じる「出玉感」を把握することはできません。「1分間に何回回るか」というS値だけでなく「どんな風に回るか」という違いも「出玉感」を左右する大きな要素だからです。
図表の競合ホールとB店はどちらもS値は6.00ですが入賞の仕方が違います。競合ホールの遊技機は安定的に入賞するのに対して、B店はコンスタントに入賞しないため、回転数が同じでも1分間あたりの「回っている時間」が大きく違います。競合ホールはずっと回りっぱなしですが、B店の遊技機には1分間に11秒間「回らない時間」があるのです。
[図表]入賞の違いによる出玉の違い
遊技機に座って打つ客は「回らない時間」の長短を非常に強く意識します。回っていない時間が長いと出なさそうに感じるので、「あのホールは出ない」となるのです。
この状況を改善するため、B店がS値を6.50にまで引き上げても問題は解決しません。6.50となれば「ブン回しじゃないか!」というのが店舗側の感覚ですが、それでも「回らない時間」は最高でも10秒の半分の約5秒間縮まるだけです。依然として6秒間も「回らない時間」が残ってしまいます。
ホールコンピュータを見ているだけでは遊技客が感じる競合ホールとの違いをつかむことはできません。事実として出ているかどうかではなく、「遊技客目線」で丁寧に試し打ちを繰り返すことで「出玉感」をつかむことが非常に大切です。「出玉感」はあくまで感覚なので、「回らない時間」以外にもさまざまな要素が影響します。たとえば稼働が落ちると、出玉率は同じでも出玉数は減ることになり、「ドル箱」を積む遊技客が減るので、出玉感が低下します。