新人の離職率が高いパチンコホールを変えた「人材教育」

前回は、パチンコホールで死活問題となる人材不足への対処法について取り上げました。今回は、新人の離職率が高いパチンコホールを変えた「人材教育」を見ていきます。

誰でも新しく仕事を始める時は「不安」でいっぱい

前回の続きです。

 

C店は系列店の中でも離職率が異常に高いことで知られていました。人手が少ない中、やっと新しい人材を確保できたと思ったらすぐに辞めてしまうのです。本社では長くその理由を把握していませんでしたが、後に店長のシフト割りに問題があることが発覚しました。

 

人材がいないホールでは店長がすべての業務をこなすことになります。中にはスーパーマンのように、あらゆる仕事で人並み以上の能力を発揮する人もいますが、ほとんどの人はあれもこれも引き受けたあげく、水準以下の仕事しかできずに終わります。

 

C店の店長も、人材不足のせいでほとんどの業務を手がけていました。しかしながら、さすがにすべての仕事を賄うことはできないため、営業に直接支障が出ない仕事はスタッフに任せざるを得ません。

 

どの仕事を自分が引き受け、どの仕事をスタッフに任せるかは店長の判断だったため、店長は新人教育の仕事を「先輩スタッフ」に任せていたのです。時にはアルバイトを始めてわずか1週間の若者が「入りたての新人よりは先輩だから」と教育係になることもありました。

 

誰でも新しく仕事を始める時には不安でいっぱいです。ましてパチンコホールはあまり一般に馴染みがない職場ですし、遊技客はお金がかかっているだけにピリピリしています。わずかなミスでひどく怒られてしまうこともあるため、安心して仕事ができるようになるまでには、それなりの育成期間が欠かせません。

 

ですから、仕事を始めて1週間ではわからないことだらけのはずです。本人がまだまだ周囲を頼らなければいけない時期に新人教育を任されてしまったら、パニックになるのが普通でしょう。その結果「こんなところでは働けない」とせっかく入った人材が辞めてしまうため、C店の離職率は異常に高かったのです。

働く人には「周囲の期待に応えたい」という欲求がある

解決策:マズローの「欲求5段階」を理解して的確に育てる

 

働く人はどんな時も「周囲の期待に応えたい」という強い欲求を持っています。アメリカの心理学者、アブラハム・マズローは人の欲求を5段階に分け、生きるために必要な最低限の欲求が満たされると、人は「他人に認められたい」という欲求を強く持ち、それを原動力として活動するようになると分析しました。

 

C店の場合にはこのマズローの分析に沿って状況を分析し、何がいけなかったのかを洗い出しました。

 

[図表]マズローの欲求5段階説

 

生理的欲求:生きるために必要な食事や睡眠に対する欲求

 

安全欲求:「家を持ちたい」「正社員になりたい」など、安全・安心に暮らしたいという欲求

 

所属欲求:仲間として認められたいという欲求

 

承認欲求:仲間に貢献してほめられたいという欲求

 

自己実現欲求:あるべき自分、理想とする自分になりたいという欲求

 

人はこの5段階に沿って成長すると考えられています。生理的欲求が満たされたら、安心したいと考えるようになり、安心できたら仲間に入れて認めてほしいと願います。仲間になった後は仲間からほめられることを望み、他者との関係がそこまで充実してようやく、あるべき自分になりたいと自己実現を目指すことができるのです。

大切なのは「丁寧な指導」と「成果に対する賞賛」

新人教育を任された「ほぼ新人」が辞めてしまうのは初歩的な欲求である「安全欲求」が満たされないためです。できるはずもない仕事を任されたら、不満と不安しか感じられません。仕事を続ける気持ちになれず、職場に来なくなってしまうのです。

 

新人に対する接し方を考える際にはこのように、マズローの欲求5段階に照らすとわかりやすくなります。

 

たとえばC店の店長はきちんと教育できていないことに引け目を感じているため、スタッフがミスをした時にも「できないで当然。任せている自分も悪いから」と厳しく指導することを避けてきました。しかし、スタッフが正社員であったり、雇用面に不安がないのであれば、これは間違いです。マズローの5段階で言えば、すでに「安全欲求」は満たされていることになります。

 

この場合、むしろ指導されないということは成果を問われないということであり、怒られない代わりにほめてももらえません。マズローの欲求5段階に照らすと、所属欲求は満たされても承認欲求は永遠に満たされないことになります。スタッフのモチベーションは上がらず、「なあなあの関係」がまかり通るホールになってしまいます。

 

かといってあまり感情的に怒るのもNGです。スタッフは「きちんと指導されていないのに、やれるわけがない。怒るのは理不尽だ」と感じ、仕事を辞めてしまいます。さらに、職場を去ったスタッフが「管理のいい加減なホールだ」と言いふらせば、ホールのイメージは確実に傷つきます。

 

大切なのは丁寧な指導と成果に対する賞賛を根気強く続けることで、スタッフの欲求が一段ずつ着実にステップアップするよう導くことです。C店の店長はそのことを理解し、少しずつ育成効果の高い接し方ができるようになりました。

 

アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社 代表取締役

1972年生まれ、福井県出身。名城大学法学部卒。遊技機販売商社勤務を経てパチンコホール企業へ。エリア統括部長、遊技機調整技術部長などを歴任したのち、株式会社エンタテインメントビジネス総合研究所入社。2012年、40歳となったことを機に起業。勘や経験に頼らない論理的なホール営業を提唱し、これまでに100店舗以上を危機から救済する。日本全国でパチンコホール営業のセミナー多数。

著者紹介

連載ジリ貧パチンコホールのV字回復戦略

ジリ貧パチンコホール復活プロジェクト

ジリ貧パチンコホール復活プロジェクト

林 秀樹

幻冬舎メディアコンサルティング

かつての勢いが衰えつつあるパチンコ業界では、着々と成長を続ける大手ホールとジリ貧必至の中小ホールの格差が進んでいます。しかし、「大手は資金力があるから…」とあきらめてはいけません。一番の違いは、資金力ではなく実…

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