人は懐事情によって「お金を使う対象」が変わる
新台入替の効果が大きく下がっている中でも、「入れたくなる機種」というのがあります。大型版権機種はファンの人気が高く、導入を望む声が大きいのは事実です。つい最近までは大きな集客ができていたこともあり、「導入して稼働を改善したい」と頼りたくなります。
B店でも資金が少ない中、大型版権機種を導入していましたが、効果の波が大きく稼働が上がるのは、ほんの数日だけというケースがしばしば見られました。その後はかえって稼働が落ち込んでしまうので、高価な新機種を購入すべきかどうか、店長も判断に苦しんでいました。
解決策:遊技客の懐事情を考慮した入替で効果を上げる
人気の機種を入れたのに、ほんの数日で稼働が落ちるという現象はジリ貧ホールでは一般的に見られます。遊技客の懐事情を考えない導入がその原因です。B店の店長はそのことを理解していなかったので、ある時には効果があるのに別の時には逆効果になってしまう理由がわからなかったのです。
商品やサービスにはお金に余裕のある時に購入・利用したいものと、そうでない時に利用・購入したいものがあります。前者は経済学では「上級財」と呼ばれ、たとえばエアコンやタクシーなどがこれに当たります。一方、後者の代表は扇風機やバスで経済学では「下級財」と呼ばれます。
お金のある時に暑ければ、エアコンを買い移動にはタクシーを使いますが、お金のない時は扇風機を買いバスで移動しようとします。懐事情によって人がお金を使う対象は変わるのです。
ホールに当てはめると、4円パチンコや20円スロット、射幸性の高い機種は上級財、1円パチンコや5円スロット、甘デジは下級財です。従って遊技客がお金のかかる機種を打とうとするのは「お金のある時」に限られます。給料日の後、ボーナス月、年金が出る月、レジャー用予算を貯めているGW前などです。
客のニーズを満たす「マーケットイン」戦略を導入
ところがB店ではそういった遊技客の懐事情をまったく考えず、稼働を上げたくなると新機種を入れるということを続けてきました。ホールの事情だけで導入を決めてきたのです。
その結果、遊技客の懐が寂しくなる給料日前や連休後に射幸性の高い機種を入れてしまうことが多く、一瞬は稼働が上がるものの、すぐに遊技客の懐が冷え切ってしまい稼働がガタ落ちになるというマイナスの影響を及ぼしていたのです。
そんな状況を受けて私がB店に導入したのは「マーケットイン」という考え方でした。「市場の論理からものごとを考え、遊技客の欲しいものを提供する(ニーズを満たす)ことで、利益を上げる手法」がマーケットインです。一方、ホールの論理からものごとを考えて、ホールの売りたいものを提供する手法は「プロダクトアウト」と呼ばれます。
戦略が「プロダクトアウト」に偏っていたB店の店長は「マーケットイン」の考えを理解することで、遊技客の懐事情に配慮した営業ができるようになりました。