今回は、「投資信託」の形態・運用手法について見ていきます。※本連載では、松本大学松商短期大学部経営情報学科の藤波大三郎教授による著書『たのしく学べるファイナンシャル・プランニング』(創成社)の中から一部を抜粋し、ファイナンシャル・プランニングの基礎知識の中から「金融資産運用」について解説します。

「契約型」と「会社型」に分かれる投資信託の形態

前回の続きです。

 

投資信託の形態としては契約型と会社型があります。契約型は前に述べた信託契約を用いている方式であり、わが国では一般的なタイプです。信託を用いていますので、財産の保管が確かであるといわれています。

 

投資信託の債券、株式は信託財産として信託銀行に保管されますが、その信託銀行が破綻しても信託財産はその信託銀行の固有の財産とは別に分別管理されていますので安全です。こうした信託財産の安全性を表す言葉に、信託は「財産の安全地帯」という言葉があります。

 

会社型は投資家が投資主となるペーパーカンパニーを設立するタイプであり、不動産投資信託で一般的な手法であり、米国ではこちらが主流です。法人ですから銀行借入も債券発行もでき、わが国の不動産投資信託は、通常、保有資産額の半分程度の銀行借入や債券の発行を行っています。なお、ETFは契約型となっています。

「アクティブ運用」「インデックス運用」の違いとは?

株式投資信託は運用手法によってアクティブ運用とインデックス運用に分かれます。アクティブ運用は、投資対象の銘柄を選んで投資するタイプで、インデックス運用はパッシブ運用といわれて日経平均株価等のインデックス(指標)と同じ動きをするように投資をする投資信託です。

 

アクティブ運用では、近年、ESG投資と呼ばれる手法が話題となっており、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)に配慮している企業を重視・選別して行う投資です。たとえば社会の観点では、女性を管理職の20%以上に登用している企業は、そうでない企業より明らかに投資の成果が良いといった研究結果もあります。

 

しかし、現代の投資理論からするとパッシブ運用のインデックス型の方が優れた運用方法とされています。これは、銘柄選びを行っても市場平均以上の運用成績を得ることは困難であるという「効率的市場仮説」に基づいています。この理論を明確化した米国のユージン・ファーマ氏は、2013年にロバート・シラー氏とともにノーベル経済学賞を受賞しています。

 

アクティブ運用にはトップダウンアプローチとボトムアップアプローチという2つの手法があり、トップダウンアプローチはマクロ的分析から投資判断を始めるものです。一方、ボトムアップアプローチは、個々の企業の分析から始めるもので、マクロ的な考えは持たないものです。ですから、国別の配分や業種別の配分は考えないことになります。

 

なお、実務ではこの2つの運用手法は併用されていますが、どちらが主かといえばトップダウンアプローチが主となっています。

 

このボトムアップアプローチは、その運用スタイルによってバリュー運用とグロース運用に分かれます。バリュー運用は割安株運用、グロース運用は成長株運用と呼ばれます。バリュー運用はPER、PBRなどの指標から見て割安と考えられる株式に投資をします。一方、グロース運用はROEが高く、将来の成長性が高い株式に投資をします。グロース株のPERは高いのですが、利益の成長により株価が成長すると考えます。バリュー運用は低いPERが将来的には普通に戻ると考えています。しかし、ROE、PBR、PERはセットで考えるべきものであり、単独では指標となりません。

 

米国ではピーター・リンチというファンド・マネージャーがマゼラン・ファンドという投資信託を成長株運用で運用して有名になりました。バリュー運用ではウォーレン・バフェットという米国の投資家が大成功しています。

 

こうしてアクティブ運用では投資銘柄の選別することから、ファンド・マネージャーの人件費や株式の売買手数料もかかるため、コストが高くなります。一方、インデックス運用は基本的に銘柄の入れ替えもなく、投資判断を行うファンド・マネージャーもいないので、その分、コストは安くなります。長期に投資を行う場合にはコストの問題が大きいのでインデックス運用はこの意味でも有力な運用手法です。個人型確定拠出年金のような長期の運用はインデックス運用によるべきでしょう。金融庁はホームページで初心者向けの商品として説明していますが、公的年金資金の運用のような専門的な運用でも用いる運用方法です。

たのしく学べる ファイナンシャル・プランニング

たのしく学べる ファイナンシャル・プランニング

藤波 大三郎

創成社

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