今回は、業務の確認手順を改善した結果、資金回収率が上がった建設会社の例を見ていきます。※本連載は、株式会社アイユートの代表取締役で、中小建設業専門の財務・原価コンサルタント、経済産業省後援ドリームゲート・アドバイザーも務める服部正雄氏の著書、『小さな建設業の脱! どんぶり勘定 事例でわかる「儲かる経営の仕組み」』(合同フォレスト)の中から一部を抜粋し、建設業の生死を分ける「資金繰り」について解説します。

電話等による指示を必ず記録することで回収率アップ

<改善事例その4 打合せ内容の記録で回収率のアップ>

 

土木の下請工事業のJ社では、元請先の担当者からの仕事の指示が、電話など口頭で行われることがほとんどでした。

 

書類を交わすことなく現場作業に着手し、工事が終了しても、元請先からの注文書が届かないことがあります。請求書を提出しても、元請先の都合によって数カ月遅れて支払いが完了するケースも珍しくありません。

 

そこで改善策として、電話などによる指示で現場作業を進める場合は、仕事内容や打合せの概要を必ず記録するようにしました。次回、元請先の担当者に会った際に、お互いに内容の確認を取り、2枚複写のメモを作成してサインを取り交わすように決めました。

 

その結果、元請先の担当者にはプレッシャーを与えることができます。J社もそのメモを代金が回収できるまで保管しておけば、請求・回収できていない工事がすべてわかります。貸し借りの分がお互いハッキリすることになり、回収率がアップしました。

日報内容の改善で、不明な売掛金を排除

<改善事例その5 日報内容の改善で請求業務の迅速化>

 

リフォーム工事業のK社では、工事代金の請求書の作成が非常に遅く、たびたびお客様から請求書の督促を受けたり、請求書の発行前にお客様が見積書の内容で振り込んでくださったりしていました。

 

改善策として、現場担当者が日報を書く際に、日時と場所に加えて、当日の仕事内容、下請の協力業者の社名や担当者名、材料の手配先などを記入するよう習慣づけました。その日報を見て、現場担当者のサポートをする事務員さんが、協力会社から見積書などを取り寄せておき、現場監督がそれらを確認しながら請求書を速やかに発行できるようになりました。

 

また、お客様あての請求書に支払期日の欄を設けて、早期のお支払いを促すとともに、支払い予定日に入金がなかった場合は、資料をもとに事務方から督促ができる仕組みを作りました。

 

その結果、お客様に請求書の発行をお待たせしたり、督促されたりすることがなくなりました。資金繰りの面でも、早く回収できることで余裕が生まれ、回収遅れの確認など、不明な売掛金の排除ができるようになりました。

小さな建設業の脱! どんぶり勘定 事例でわかる「儲かる経営の仕組み」

小さな建設業の脱! どんぶり勘定 事例でわかる「儲かる経営の仕組み」

服部 正雄

合同フォレスト

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