今回は、取引先の倒産によるリスクをヘッジするために建設会社が打ち出した対策の例を見ていきます。※本連載は、株式会社アイユートの代表取締役で、中小建設業専門の財務・原価コンサルタント、経済産業省後援ドリームゲート・アドバイザーも務める服部正雄氏の著書、『小さな建設業の脱! どんぶり勘定 事例でわかる「儲かる経営の仕組み」』(合同フォレスト)の中から一部を抜粋し、建設業の生死を分ける「資金繰り」について解説します。

取引先の倒産に備える「中小企業倒産防止共済」

専門工事業の年商12億円のN社では、取引先の倒産など、不良債権の発生がたびたびありました。取引先の倒産は、金額によっては連鎖倒産という最悪の事態も考えられる大きなリスクを伴います。

 

そこで、2つのリスクヘッジ策を打ち出しました。

 

①中小企業倒産防止共済に加入

 

ご存じの方も多いと思いますが、簡単にご紹介しますと、万が一、取引先が倒産したときには、掛金の10倍の範囲内で、最高8000万円まで無担保・無保証人で貸付が受けられます。最高で月額20万円まで掛けることができ、掛金は全額必要経費となります。

 

経費として落としながら、掛金の納付が12カ月分以上あれば、解約時には80パーセント以上の解約手当金を受け取ることができるなど、税金面・資金繰り面でも大きなメリットがあります。ただし、掛金の納付が11カ月以下だと、解約手当金はゼロになりますので要注意です。

管理職の意識を高める「取引先与信制度」の採用

②取引先与信制度の導入

 

まず新規の取引先には、大手の信用調査機関の調査資料を取り寄せます。その評点や取引先の状況などと決算書の財務内容を分析して、一定の金額を決めます。

 

Sランクは、役所や上場企業の中でも優秀な先に限定します。一応、無制限に近いのですが3億円としました。Aランクは、調査機関の評点が高く、財務内容が優秀な取引先で1億円が限度です。続いてBランクは5000万円、Cランクは3000万円など。

 

限度枠を超過する取引をする場合は、社長の事前決裁を得ることが義務づけられました。

 

そして毎年、建設業の事業年度終了届の資料を更新して、財務内容の変化に対応していきます。

 

この制度を導入したメリットは、経理部長だけでなく、営業部や工事部の管理職が与信に対して関心を払う必要性、経営の一部を担うという気持ちが出てきたことと、営業担当者がその会社の動きなどに注意を払うようになったことです。

 

中小建設業では一歩進んだ仕組みができたと社長は喜んでいました。商売にリスクはつきものですが、リスクからなるべく遠ざかる努力は必要です。

小さな建設業の脱! どんぶり勘定 事例でわかる「儲かる経営の仕組み」

小さな建設業の脱! どんぶり勘定 事例でわかる「儲かる経営の仕組み」

服部 正雄

合同フォレスト

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