今回は、請求書の取り扱いを見直し、資金繰りを改善した建設会社の例を見ていきます。※本連載は、株式会社アイユートの代表取締役で、中小建設業専門の財務・原価コンサルタント、経済産業省後援ドリームゲート・アドバイザーも務める服部正雄氏の著書、『小さな建設業の脱! どんぶり勘定 事例でわかる「儲かる経営の仕組み」』(合同フォレスト)の中から一部を抜粋し、建設業の生死を分ける「資金繰り」について解説します。

協力業者からの請求書が遅く、支払い額の確定が遅れ…

専門工事業のL社では、協力業者から請求書が届くのが遅く、毎月の支払い額の確定が遅れ、資金繰りにも悪影響がありました。

 

「月末締めの翌月末払い」が支払条件でしたが、ひどいケースでは、支払い日の前日に協力業者の方が前月分の請求書を持参し、「何とか月末に支払ってください」とお願いされることもありました。

 

L社の現場担当者らは、普段から仕事で無理を聞いていただいているので、「何とかお願いします」と社長に頼み込むわけです。となると、経理としては、支払い予定金額の増額などの対応が必要になってきます。

 

なかには、協力業者から見積書が出されていても、担当者が金額の返事を忘れているなど、先方が請求書を出せない原因が自社側にあった例も見受けられました。

請求書の到着締め切り日を定め、協力業者に周知

改善策として、協力業者からの請求書の到着締め切り日を翌月5日必着と定め、6日以降に到着した請求書は次の月に回すというルールを作りました。すると、自社の担当者は、自分が返事をしないことで協力業者さんが困ることを理解し、できるだけ早く連絡をするようになりました。

 

また、協力業者の資金事情を考慮し、請求書が遅れた場合の特例救済策として、請求金額の範囲内で、前払金のような形でとりあえず支払うことにしました。翌月、正しい請求額から前払金の分を相殺し、差額を支払うことで、協力業者のピンチを救うことができます。事務処理面でも改善を図ることができました。

 

さらに、到着した請求書をまずエクセルの一覧表にして、最大支払い金額を確定することにしました。これによって、経理は翌月の最大支払い資金がわかります。その後、工事担当者に決済印をもらうのですが、その際に工事名と工事番号の記入を義務づけました。

 

事務は専用ソフトでそれを工事番号ごとに入力して、工事台帳を作成します。工事別・担当者別の一覧表から、請求済みの工事は完成扱い、未請求の工事は未成工事として表示すれば、未請求の工事を確認することができ、請求もれの防止につながりました。元請先ごとに、回収不可工事の把握と回収促進にもつながりました。

 

結果、資金繰り面でも成果が表れ、工事管理面と回収面でも改善が図れました。元凶となっていた協力業者の請求のルーズさと、それを認めていた会社の甘さ、支払いのルールがなかったことを、社長は反省しておられました。

小さな建設業の脱! どんぶり勘定 事例でわかる「儲かる経営の仕組み」

小さな建設業の脱! どんぶり勘定 事例でわかる「儲かる経営の仕組み」

服部 正雄

合同フォレスト

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