今回は、米国メンフィスの都市開発動向を見ていきます。※本連載では、Win/Win Properties, LLCの呉純子氏(パートナー/アメリカ代表)が、日米での不動産開発や都市計画作りに携わった経験なども踏まえ、米国不動産投資の穴場といえる「メンフィス」の最新不動産事情をご紹介します。

主要駅の再開発、病院拡張…街の大規模開発が続く

アメリカ不動産市場は相変わらず活況を呈しています。特に、私が住んでいるカリフォルニア市場などはまだまだ価格が上昇しています。こういった価格高騰中のコントロールが難しいマーケットに比べ、私たちが投資しているメンフィスは常に手頃な価格、かつ地域経済が伸びる街として高く評価されています。投資家にとっては、ずばり「安定性」が重要。それを踏まえ、最新のメンフィス開発動向を紹介したいと思います。

 

まず、最近進んでいるのがダウンダウンにある「メンフィス・セントラル駅」周辺の再開発です。これはヘンリー・ターリー社とコミュニティ・キャピタルの共同資本による5500万ドル(約55億円)の開発です。第1ステージとしては、大規模の映画館の修繕、ファーマーズマーケット開発、そして9棟の新築集合住宅の建設が含まれています。この開発デベロッパーは、駅周辺設備の更新やパーキングエリアの拡大など、公共エリアの再設計も提案しています。

 

さらにその次の第2ステージとして、新規ホテルの開発やショッピングセンターのリノベーション、バスターミナル開発プランなども続々と進められています。総合開発面積17エーカー(約2万坪)に及ぶメンフィス大規模プロジェクトは、2016年の4月からすでにデザイン・設計などが進んでいます。

 

[写真1]再開発とダウンタウンの活性化「メンフィス・セントラル駅」周辺開発

http://www.bizjournals.com/memphis/news/2015/11/02/central-station-project-to-add-200-apartments-to.html#g1]
http://www.bizjournals.com/memphis/news/2015/11/02/central-station-project-to-add-200-apartments-to.html#g1

 

そして、メンフィスでもう一つの大きな開発計画として「セント・ジュード小児病院」の拡張があります。2016年には「6年間プラン」として、総額900億ドル(約9兆円)をオペレーションや新プログラムに投資し、100億ドル(約1兆円)の資金を工事に注ぎ込むと発表がありました。それに伴い、2000人の雇用を増やす予定もあるようです。

 

[写真2]再開発とダウンタウンの活性化「セント・ジュード小児病院」の拡張

http://archive.commercialappeal.com/business/jobs-wages/st-jude-plans-12-billion-memphis-expansion-23d218f9-5227-412f-e053-0100007fc736-342014851.html]
http://archive.commercialappeal.com/business/jobs-wages/st-jude-plans-12-billion-memphis-expansion-23d218f9-5227-412f-e053-0100007fc736-342014851.html

 

多くの小売業社にとって、こうした大規模開発は魅力的な参入先と映っているため、成長と安定性を求める不動産投資家にとっても投資対象として最適な場所となっています。ダウンタウンの再開発や小児科病院の拡張といった要素は周辺地域の不動産価値を上昇させるものになるでしょう。今後も、空き地の開発や再利用が行われ、地域の活性化とともに経済が成長していくことは間違いないと思われます。

大手小売業の参入ラッシュに伴う「雇用創出」への期待

メンフィスといえばジャズやバーベキューが広く知られていますが、近年では小売業者にとって「借りる」「買う」「土地の再開発を行う」のに最適な場所としても知られています。商業ビルの空室率が減り、新規テナントが次々と参入しているのです。大手アウトドア用品店バスプロショップス、IKEA、そして大手、オーガニックスーパーのホールフーズまで、メンフィスはいつの間にか小売りのハブとなっているのです。

 

他の地域に比べると生活コストが安いメンフィス。この街のことを多くの人が「食べて、遊んで、帰る」ではなく「食べて、遊んで、住みつく場所」だと言って親しみを持っています。

 

メンフィス近郊にオープンした「Tangerアウトレット」では750万ドル(約7.5億円)の売り上げを初年度で記録しました。さらに、メンフィス南部にあるジャーマンタウンにては「Sproutsファーマーズマーケット」という専門食品チェーンも上陸。オーガニック食品で有名な食品巨大チェーンである「ホールフーズ」も展開を続けています。そして、アメリカ中南部では初上陸という「トレーダー・ジョーズ」が今年春にオープン。ホールフーズという巨大食品チェーンと同規模である食品企業の参入は、既存と新規の小売業者をリードするだけではなく、地元の食料品部門の成長拡大にも影響します。

 

[写真3]小売業:トレーダージョーズ

http://www.wmcactionnews5.com/story/30095257/trader-joes-set-to-open-first-location-in-the-mid-south]
 

 

こうした、生活用品チェーンや食品チェーンの出店ラッシュは住民の増加、需要の高まりを示すものです。これらの展開はメンフィスの新規雇用に直結していますので、地域の活性化と経済成長を強化する要素になるでしょう。

 

これらの状況から分析してみても、アメリカでの不動産投資で安定性を求める投資家にとって、メンフィスは最適な投資場所だと考えられます。

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