原則2年ごとの薬価改定が「毎年実施」へと変更
薬価改定については、さらに厳しい引き下げが行われます。これまで、原則2年ごとに実施されてきた薬価改定を毎年実施することで、国は薬価差の解消をよりシビアに進めようとしているのです。
医薬品卸と仕入価格の引き下げを交渉するのは医療機関にとって当然の経営努力です。経営のために「薬価差益」を少しでも確保しようという医療現場の経営努力を、逆手に取るような政策です。その上、医療機関は医薬品の仕入れ時に卸売業者に消費税を支払いますが、その分を患者に求めることができません。このまま薬価差損が膨らめば、病院経営は一段と厳しい状況に陥ります。在庫分の医薬品の価格が改定をまたいで引き下げられれば、薬価差損が拡大しかねません。
進行する「都市部への医師の偏在」
医療費削減策の影響で収入が減少するなら、病院はコスト削減によって利潤を生むしかありません。
病院にとって最大のコストの一つが人件費ですが、医療は典型的な労働集約型(労働力に対する依存度が高い)の「産業」です。そのため、高コスト体質からの脱却は難しいとも言われています。たとえば医療法では、患者数によって病院に配置する医師数を規定しています。ところが、病院にとって大切な収入源となる手術の経験が豊富な医師は限られているため、常に完全な売り手市場です。この状況が医師の偏在に拍車をかけているのです。
全国の2469病院(2017年3月現在)が加盟する日本病院会(日病)が2015年の10〜11月に実施した地域医療再生に関するアンケートの結果(回収率27.3%)によると、同年4月時点での常勤医の数が、5年前に比べて「増えた」と答えたのは361病院で、有効回答があった660病院の過半数を占めました。
この結果だけを見ると、医師不足が解消に向かいつつあると受け止められるかもしません。ところが、常勤医が増えた病院には地域差があり、「指定都市・中核市等」で64.7%(320病院中207病院)を占めたのに対し、「郡部・町村」では27.5%(40病院中11病院)と3割を割り込みました。
この割合を2013年に実施した前回の調査結果と比べると、「指定都市・中核市等」では「増えた」が9ポイント上昇していますが、「郡部・町村」では17ポイント低下しており、都市部への医師の偏在が進行していることを示唆する結果です。