暦年贈与で注意したい「名義預金」と「連年贈与」のトラブル

暦年贈与で注意したい「名義預金」と「連年贈与」のトラブル

今回は、暦年贈与で注意したい「名義預金」や「連年贈与」のトラブルなどについて見ていきます。※本連載では、税理士法人チェスター監修、株式会社エッサム編集協力、円満相続を応援する税理士の会の著書『相続は突然やってくる!事例でわかる相続税の生前対策』(あさ出版)から一部を抜粋し、ある程度財産を持っている人が、生きているうちに行える相続対策を紹介していきます。

贈与する段階で講じておきたい「税務署対策」

暦年贈与は、基礎控除におさまる額で毎年渡していくだけ。シンプルではありますが、守るべき重要事項があります。それは、将来「これは確かに贈与である」と税務署に認めてもらえるようにしておくということです。

 

どちらかというと、生前贈与は相続税対策でおこなわれることが多いため、税務署は相続時に、「相続税逃れの見せかけの贈与ではなかったか」と、チェックを入れます。

 

税務署から「これは贈与と認められない」と指摘されたら、贈与を受けていた人は「いえ、確かに贈与です」と証明しなければなりません。ただ、その時点で贈与した人は亡くなっているわけですから、簡単なことではありません。しかし、贈与する段階であらかじめ税務署対策を講じておけば、そのトラブルを防ぐことができます。

 

特に注意したいのは、「名義預金」と「連年贈与」のトラブルです。

 

名義預金とは、贈与を受けた人が口座の名義人になっていても、実際にその人が通帳を持っていないなど、実質的に管理をしていない状態の預金をいいます。この場合、相続時に「贈与しました」といっても「贈与」とは認められず、相続財産として扱われます。

 

対策としては、通帳や印鑑を贈与を受ける人に渡したうえで、その口座のお金を、公共料金の引き落としなどに使ってもらうことが考えられます。つまり、「贈与されたお金を、実質的に管理しています」という証拠を作っておくのです。

 

一方、連年贈与とは、贈与が定期的におこなわれていたり、毎回定額だったりすると、「最初の年に『贈与を毎年受ける権利』が贈与されていた」とみなされるというものです。

 

たとえば、10年間同じ日に100万円ずつ贈与していた場合、最初の年に計1000万円を連年で受け取る権利を贈与したとみなされる可能性があります。またこの場合、最初の年の基礎控除110万円を除いた890万円に贈与税が課されてしまう恐れもあります。

 

対策としては、贈与の期日や金額を毎回変えることが考えられます。また、贈与しない年をはさんでみるのもいいでしょう。ただ、渡す人、受け取る人の間で、毎回、贈与契約書を交わしておくことにより、特に期日や金額を変える必要はなくなります。

「相続開始前3年以内の持ち戻し」とは?

暦年贈与に関して、高齢の方に特に知っておいてもらいたいのが、「相続開始前3年以内の持ち戻し」という税法上のルールです。これは、相続が発生した時点からさかのぼって3年以内におこなわれた贈与については、相続財産として扱われるというものです。

 

わかりやすくいうと、贈与した人が亡くなった瞬間、直近3年分に贈与した財産は、「贈与ではなく、相続で受け取った財産だ」とされ、贈与税ではなく、相続税の対象となります。つまり贈与はなかったものとされるのです。

 

この持ち戻した贈与財産を本来の遺産に足し合わせた額が、税法では「正味の遺産額」とされ、相続税はこれをもとに計算されます。本来の遺産が相続税の基礎控除の枠内でおさまっていても、持ち戻し分を足した額が基礎控除を超えれば、相続税が課されます。ですので、相続税対策に暦年贈与を利用する場合は、早めに動くことがおすすめです。

 

[図表]

本連載は、2017年2月26日刊行の書籍『相続は突然やってくる!事例でわかる相続税の生前対策』から抜粋したものです。稀にその後の法律、税制改正等、最新の内容には一部対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続は突然やってくる! 事例でわかる相続税の生前対策

相続は突然やってくる! 事例でわかる相続税の生前対策

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あさ出版

将来の相続を見据えながら、贈与でキャッシュを減らしたり、不動産の活用で節税につながるよう土地の整理をおこなうなど、生きているうちに行えるさまざまな相続税対策を提案。また、各パートの前半では、相続の悩みや起こりや…

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