前回は、連鎖倒産の恐れもある「貸し倒れリスク」の対策について説明しました。今回は、先代社長の「連帯保証」を引き継がずに会社を引き継ぐ方法を見ていきます。

「経営者保証に関するガイドライン」を活用

事業を承継し社長の地位に就いたときには、通常、先代が会社の債務について負担していた連帯保証も引き継ぐことになります。

 

しかし、連帯保証人になれば、会社に万が一のことがあったときに自らの財産を全て失いかねません。「できれば保証人にはなりたくない」と思っている人は多いはずです。

 

そのような方に検討をお勧めしたいのが、中小企業庁と金融庁の後押しで平成25年に制定された「経営者保証に関するガイドライン」の活用です。

 

このガイドラインは、経営者による個人保証が事業承継の妨げになっている状況などを踏まえて、「経営者の保証がなくとも新規融資を行う」「経営者の保証を解除する」ことを金融機関に求めたものです。

 

後継者の立場からいえば、ガイドラインに定められている要件を満たせば、保証人にならずに会社を引き継ぐことが可能となるわけです。

「4つの条件」を満たして保証解除等の対象に

概要を確認すると、以下の⑴から⑷を満たす経営者が保証解除等の対象となります。

 

⑴主債務者が中小企業であること

 

⑵保証人が個人であり、主債務者である中小企業の経営者等であること

 

⑶主債務者である中小企業と保証人であるその経営者等が、弁済に誠実で、債権者の請求に応じて負債の状況を含む財産状況等を適切に開示していること

 

⑷主債務者と保証人が反社会勢力でなく、そのおそれもないこと

 

さらに、企業の経営状況に関して「法人と個人の分離」「財務基盤の強化」「適時適切な情報開示」が求められています。

 

実際に、この制度を利用して事業承継の際に保証が解除されているケースも現れています(以下の図表にその実例をあげました)。ガイドラインの詳細はホームページで公表されているので、自社が要件を満たすようであれば、是非、トライしてみてください。

 

[図表]事業承継の際に保証が解除されているケース

本連載は、2016年10月21日刊行の書籍『「親族内」次期社長のための失敗しない事業承継ガイド』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

「親族内」次期社長のための失敗しない事業承継ガイド

「親族内」次期社長のための失敗しない事業承継ガイド

大磯 毅/中山 昌則

幻冬舎メディアコンサルティング

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