前回は、「キャッシュフロー計算書」のチェックポイントを取り上げました。今回は、中小企業の資金不足を回避するための「資金繰り表」の活用法について見ていきます。

月中の資金の流れと、月末の現金残高を正確に把握

「設備投資にお金がかかりすぎている」「商品の在庫が増えすぎている」「借入が多い」といった状況が存在すると資金が回らなくなり、最悪の場合、黒字倒産になりかねません。先に触れたキャッシュフロー計算書を活用すれば、資金の現状が明確になるので、そうした資金繰りのトラブルの防止が可能です。

 

しかし中小企業では、法で作成を義務づけられていないなどの理由から、キャッシュフロー計算書が用意されていないところも多いでしょう。その場合には、最低限、資金繰り表をしっかりと作成することをお勧めします。

 

資金繰り表を毎月チェックすることにより、月中の資金の流れと月末にどれくらいの現金が残るのかを正しく把握できるので、資金不足となる状況を事前に避けられるはずです。

月初現預金残高等の「5つの要素」を図表で管理

資金繰り表の具体的な作成方法としては、以下の①から⑤の要素を図表のような形でまとめると良いでしょう。

 

①月初現預金残高

 

②経常収支

●経常収入:売上による収入、その他収入

●経常支出:仕入による支払い、人件費による支払い、経費の支払い、利息の支払い

 

③経常外収支

●経常外収入:金融機関借入

●経常外支出:設備投資による支払い、金融機関借入金の返済

 

④総収支(経常収支と経常外収支の合計)

 

⑤月末現預金残高

 

資金繰り表は、基本的に資金不足対策のために利用するものです。お金の流れを踏まえた機動的な財務戦略を進めるうえではキャッシュフロー計算書が必須となるので、将来的にはその作成を、是非前向きに検討してください。

 

[図表]資金繰り表の一例

本連載は、2016年10月21日刊行の書籍『「親族内」次期社長のための失敗しない事業承継ガイド』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

「親族内」次期社長のための失敗しない事業承継ガイド

「親族内」次期社長のための失敗しない事業承継ガイド

大磯 毅/中山 昌則

幻冬舎メディアコンサルティング

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