長引く不況による売上げ低迷、将来の人口減…
本連載で紹介してきたことは、私が下請けをしていた平成13年当時までのことを基本としていますが、今でも住宅業界の本質は変わってはいません。ただ、長引く不景気からどの会社も売上げが低迷しています。それ以上に、人口が今後大幅に減少していくことがわかっています。つまり、景気に関係なく、住宅市場も今後ますます縮小していくわけです。そうした中で、ハウスメーカーなども、昔のままの姿勢では受注が思うようにできません。
大手ハウスメーカーの場合、かつては予算が2500万円を切るお客様は客ではないとすら言っていたこともあるのです。それも昔の話だと思います。
ただ、その本質は変わりようがないのだと思います。施主となる個々人にとっての1000万円の重みが、住宅業界にいる多くの人間たちにはわかりません。いつも大きな金額を見ているせいで、感覚が麻痺してしまっているのです。
しかも、私たちもそうでしたが、景気が悪くなると、実入りは大幅に減っているのに、やることだけは増えて行きます。サービスが求められるようになり、しわ寄せはすべて下請けに行きます。それが施工精度、下手をすれば見えないところの施工品質に影響することも少なくないのです。
本当に頼りになる営業マンや住宅会社を見つけるには?
営業面にも焦りが見えます。
たとえばひと昔前まで、現場見学会は地域に根付いた中小工務店の専売特許でした。そうした手法は、ここまでの話でもおわかりいただけると思いますが、大手ハウスメーカーは嫌う方法でした。しかし、昨今では貪欲なまでに、そうした手法も取り入れています。その理由は地域密着ではなく、顧客情報の入手であり、その早期取り込みです。そうした場に参加することが必ずしも悪いこととは言いませんが、どうか、巧みに演出されたその勢いに流されることなく、家づくりのパートナーはしっかりと見極めていただきたいと思います。
また、こんな例もありました。ある会社のホームページで20人ほどのOBのお客様が顔出し動画のインタビューに答えていました。ほぼ全員の語る内容を集約すると「120%満足しています」というものでした。いわゆる口コミの操作です。
その会社の業界内での評価はそこまで高くなく、案の定ほどなくして倒産。その後、倒産に先立ち、工事途中のお客様からも工事代金の回収を急いでいたことまで判明しました。さらに、この動画についても後に実態がわかりました。全員に謝礼を払い、名前・表札を出して、筋書通りの返答をさせていたというのです。これは極端なケースですが、巧妙な手口で多くの人が騙されても仕方がないと言わざるを得ません。
本書『改訂版「家づくり」は住宅会社選びで9割決まる 』の第2章では、家づくりを任せる住宅会社を選ぶ際に、注意すべき点を10項目に分けて説明したいと思います。セミオーダーを主体とするハウスメーカー選び、フルオーダーを主体とする住宅会社選び、両方に関わるポイントです。
最低限、第2章で伝えるポイントを踏まえることが出来れば、家づくりの方向性を見失う可能性は極めて低いものになると思います。自分たちにとって、本当に頼りになる営業マンや住宅会社を見つけることが出来ると思います。
本書のタイトルにもある通り、「家づくり」の成否は住宅会社選びで決まります。選び方を間違えると、いくら悔やんでも取り返しがつかない事態に陥ってしまう危険性があるのです。
この人、この会社ならば人生を預けられる。人生を左右する数千万円を預けられる―そう思えるような最良のパートナーと巡り合うために、本書の次章以降で解説する住宅会社選びの指標を活用してください。